石畳の広場 2
荷物の一つ一つには、所有者の名前の書かれた木製のタグが付いていた。
新入生たちはそれぞれ大きな鞄を背負い、また両腕にもたくさん荷物の詰まった袋を下げているため、取り付けられたタグが、カラカラと心地よい音を響かせている。
「うう、やっぱり重いよう。」
「もう少しだから頑張って、イリスタ。ほら、小さいのはいくつか持つから。」
アンナの荷物は、身長の半分くらいの大きな鞄が一つだったが、イリスタの荷物は、アンナと同じくらいの鞄に、その上に頭と同じくらいの大きさの鞄が乗っており、更には両手いっぱいにいくつも袋を抱えていた。
一方ナグの荷物は、肩から斜めにかけられた、体の幅に隠れてしまえるほどの小さい鞄一つだった。
ナグはキョロキョロと周りを見ては、自分の身軽さに手持ち無沙汰を感じていた。
「そうか、特に違う国から来た子たちは、すごい量の荷物になるんだよね。アンナちゃん、イリスタちゃん、大丈夫?私も手伝うよ。」
「うう、ありがとう、ナグちゃん。」
押し潰されそうな大荷物を背負ったイリスタは震える声を出していた。
荷物と一緒に、麻紐で丁寧に束ねられた数枚の紙が配られていた。
解いてみると、一枚目に王国の全体地図、二枚目には、より詳細な学院内の地図、残りの紙には、これから数日間の予定が記されていた。
アンナとイリスタは、改めてグラブダ王国の全体図を見て、目を丸くした。
今日訪れた場所にさえ、規模の大きさに驚いてばかりであったのに、それは王国の、ほんの中心部だけに過ぎなかったと再確認させられたからだ。
グラブダ王宮を中心とした一枚目の王国全体図によると、北側は山岳地帯、南にはアンナとイリスタが到着した港が、その港を大きく囲むように東西に街並みが伸びている。
東側には主に商店が並び、西側には国民の住居があると描かれている。
学生用の寮は、二枚目の地図に描かれた王宮の正門を通った先、王立学院の敷地内にあり、王宮を正面に見て、石畳の広場から枝分かれした道の先にあると描かれていた。
「ふへぇ、ちょっと歩くねぇ。」
それを見たイリスタは、深くため息をついた。
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