緋色の瞳 2

 ナグは、グラブダ王国内のとある孤児院で育ったという。

 その規模は小さいながらも、この国の学術に関する方針に則り、読み書きは一通り教わることが出来た。

 自分の部屋の窓から見える王宮の荘厳な佇まいに、いつかその場所に行きたい、いや、行かねばならないような感覚をいつも抱いていた。


 その不思議な感覚は、自分は実は王族である故なのではと、絵本に描かれるような物語を想像しては、養父母や他の子供たちに話をしていた。

それはありえない話だと言われながらも、その作り話は実に面白いと評判になり、噂を聞いた学院が、是非その才能を磨かせて欲しいと申し入れ、今年の入学が決まったのだという。


「すごい!そのお話、私たちも聞きたいな!」

 「私たちが聞くだけじゃ勿体ないね。本にしたら、皆にもっと読んでもらえるかも。大図書館があるんだもの、物語の読書が好きな人も多いはずよ。」

 アンナもイリスタも、興味津々でナグの顔を見つめていた。

 

「えへへ、何だか照れちゃうな。本当にあり得ない話だけど、もしかしたら・・・って考え始めると、どんどんお話が出来ていっちゃうんだ。何となく、私の頭の中で終わらせても良いと思っていたけど、そっか、本にしても良いんだよね・・・。」

ナグはまた頬を赤らめて、頭をポリポリと掻いた。


「そうだよ!ナグちゃんの考えたお話が図書館や本屋さんに並んで、皆が読んでいるなんて、とても素敵!」

「私たちの国の皆にも、本があればナグちゃんのお話を伝えられるものね。」


「うん、うん、それも良いかも・・・。ありがとう、ありがとう。」

ナグは、二人に感謝を言いながら、また、自分にも言い聞かせるように呟いた。


「ただ、惹かれていたのが王宮だと思っていたから、王族だっていう物語を作っていたけど、大柱だったっていうのは、どうしようかな。」

 三人はううんと頭を捻った。

 「難しいね。大柱の魔法についてもっと勉強出来れば、良いアイデアが浮かぶかも知れないね。」


 三人の目の前には、グラブダ王宮内への大扉が聳えていた。

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