緋色の瞳 1
大図書館を後にし、王宮へ向かう大階段を登りながら、アンナとイリスタ、ナグの三人は、これまでのことを話していた。
「私とアンナは、ここからずっと東の、とても小さい国から来たんだ。みんな優しくて、大好きな国をもっと豊かにしたいって思っている人たちが沢山いてね。私たちも、少ししかない本と、国でたった一人の先生にかじり付いて、勉強を教えてもらっていたんだ。」
「そんな時、五年に一度のグラブダ王国への連絡船が、私たちの国から近い港に寄港するって聞いて、国の皆が私たちを送り出してくれたの。『しっかりと勉強して、立派な先生になって帰ってきなさい』って言って。」
二人は、遠い故郷を思い返しながら、改めてグラブダ王宮を見上げ、
「私たちの国も、この国に負けないくらい、素敵な国にしたいな。」と、呟いた。
そんな二人の決意の眼差しを、ナグは眩しそうに見つめていた。
「二人を見ているだけで、本当に故郷が大好きなんだなって分かるよ。とても素敵なことだね。うん、きっと二人なら出来るよ。そんな気がする。」
ナグの細められた瞳から覗く緋色は、二人の決意を後押しするように光って見えた。
「ありがとう。そう思ってくれるナグちゃんも、きっとこの国でやりたいことが出来るよ。私たちも協力するね。」
「その為にもまずは、この国のことをもっと知って、馴染まなくちゃね。自由時間になったら、他にも色々見て回りたいな。さっきの図書館ももっと見たいし、街のお店にも行ってみたいし、先生や上級生たちの話も聞いてみたいし、それにそれに・・・。」
「うふふ、イリスタったら。落ち着いて。彼女ね、先生になる勉強なら全部やりたいって言うの。最終的には、それは私も同じなんだけど、時間は限られてるんだし、せめて留学中は、勉強する分野を絞ったらどうって言ってるのに。気持ちは分かるけどね。」
アンナは少し呆れたようにしていた。
「すぐには決められないよね。私も出来ることなら、全部知りたいな。私はね、この国の生まれではあるんだけど、お父さんもお母さんもよく知らないの。ただ、小さい時からずっとグラブダ王宮に惹かれていたんだ。・・・ううん、王宮じゃなくて、あの大図書館の大柱に惹かれていたんだ・・・。今日初めて大柱を目の前にして気付いた。それが何故なのかは分からないけど。」
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