王立図書館 1


 まず目に飛び込んできたのは、途方もない数の本。棚の下段から上段まで、左から右まで、様々な形や色の装丁が施された本が、まるで美しさを競うようにズラリと背を並べていた。

その光景を照らすのは、正面に聳える、淡く光る例の大柱。それを囲むように並ぶ本棚の前では、多くの学生が本を見定めていた。

その目に叶い、手に取られた本は、誇らしく胸を張るように輝いていた。

 古い魔法を秘めた大柱の力は、アンナとイリスタを一瞬で魅了するのには十分だった。


 「ようこそ、グラブダ王立学院大図書館へ。」

 新入生たちの前に現れたのは、腰まで伸びるふわふわした栗色の髪をゆるく三つ編みにした、片目に拡大鏡を載せた小柄な女性だった。

 「彼女は、この大図書館の筆頭司書、プラム。学院生活の中で恐らく、これから最も皆さんがお世話になる方です。」

 ゼライツに紹介された女性が続ける。

 「ご紹介に預かりました、筆頭司書のプラム・ユートリッツと申します。この大図書館で約五十年、本に囲まれた暮らしをしております。お探しの本がありましたら、どうぞお気軽にお声をかけてくださいね。」

 人懐こいその微笑みは、若々しく見えた。


 「あれ?プラムさん、今五十年って。」

 「聞き間違いかな。だって・・・。」

 俄かに新入生たちにどよめきが走る。いくら若々しく見えると言えど、彼女のその容姿は明らかに、自分達とそう変わらないものであったからだ。


 プラムはニコリと笑って答えた。

 「皆様の疑問は尤もです。この大図書館でお仕事を始めてから、容姿が変わらなくなったのです。何故でしょうね。これが大柱の古い魔法のせいなのか、それとも私の日々の努力の賜物なのかは分かりません。しかし、年相応に苦労し、努力していることは確かです。ふふふ、これからの学院生活の中で、その謎が分かったら、私にこっそり教えてくださいな。楽しみにしています。」


 大図書館に満ちる不思議な空気に触れた新入生たちは、興奮冷めやらぬ様子で、続く説明に耳を傾けた。

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