グラブダ王国 2
「長い再生戦争の多大な犠牲と苦労の上に、このグラブダ王国はあります。それを知り、敬意を払うことこそ、この国で暮らす我々の責務であり、先人たちへの最大の弔いとなるのです。」
グラブダ王宮正門に掲げられた国章に向かって、案内人たちは恭しく頭を下げた。
王国の歴史を聞いた新入生たちも、彼らに続いて礼をした。
正門をくぐった先には、白い石畳の広場があり、囲むように白亜の建物が軒を連ねている。広場中央には、アーカーシャの像と噴水があり、その向こう正面に、王宮へと続く、見上げる程の大階段が続いていた。
広場のあちこちに、制服を纏った学生が、それぞれの時間を送っていた。木陰で本を読む者、学友と話している者、新入生に手を振る者と、皆明るく活気に満ちていた。
「培われた知恵と技術、謂わば叡智の結晶は、グラブダ王宮内の大図書館に全て納められました。そして、大図書館の中央の大柱には、目録作りの魔法がかけられました。」
説明を続けるゼライツと案内人たちに続いて、王宮へと続く大階段を登っていくと、中程にも広場があり、その先には階段内部へと続く群青の大きな扉があった。
「目録作りの魔法?」
アンナとイリスタをはじめ、新入生たちは聞いたことのない魔法に首を傾げた。
「ええ。戦争の中で生み出された古い魔法です。その場所にある記録媒体から情報を取り出し、整理・分類して貯め込むという効果を持ちます。これにより、万が一、本などの記録媒体が消失しても、魔法のかかった大柱さえ無事ならば、情報自体が消えることはありません。」
「叡智の結晶のその目録のことを、『アカシック・レコード』と我々は名付け、再生戦争以後今日まで守り抜いてきました。そして平和になった現代で、次に我々がすべきことは、その叡智の結晶を正しく世に広め、新たな知見を持って、更なる叡智の発展を目指すこと。『アーカーシャ』とは、その目録を世に広める魔法のことを指します。それは生き物のように繊細な魔法で、それでいて雲のように形に囚われないものなければなりません。」
説明が終わると、龍とヒトのレリーフが彫り込まれた重厚な扉がゆっくりと開かれた。
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