アンナとイリスタ 3

集合場所である銅像の前には、その後も多くの者が集まってきた。

 年齢も、背の高さも、肌の色も、それぞれ異なっていた。

 それでも、ここに集まっているのは皆、学を志してやって来た同朋である、ということに、アンナとイリスタは深く感動を覚え、これから始まる学院生活への期待に胸を膨らませていた。


「新入生の皆様、ようこそ我がグラブダ王国へ。」

 王国の入り口である群青色の大きな扉が開き、歓迎の言葉と共に、数人の案内役が現れた。

 グラブダ王国の国章が胸元に、王立学院の紋章が左肩に、それぞれ金糸で縫い付けられた、白地に群青色が差し色の制服を纏っている。

案内役の先頭に立っているのは、すらりとした体躯に、切れ長の橙色の目、薄い灰色の長髪を持つ男性だ。

胸元の国章の下にはいくつもの勲章が光り、一目で学院の有力者の一人だと分かる。

「初めまして。私はグラブダ王立学院長補佐のゼライツ・リタ・フォン・ブラウシュタットと申します。」


 案内人達は、新入生たちに『グラブダ王立学院』と銘が彫られた紐付きの銅のメダルと国章が刺繍されたスカーフを配り、それぞれ受け取ったことを見届けたゼライツが言葉を続けた。

 「これは学院生である証です。学院内にいる間は必ず着用をしてください。メダルの色は進級する度に銀、金と変わっていき、卒業すると、王国の象徴色の群青色のメダルが授与されます。また、このメダルをつけた者は、学院内の施設は勿論、王国内のあらゆる場所で様々な優遇措置を受けることが出来ます。」

 メダルの裏面には、目の前にそびえる銅像・アーカーシャの姿が彫り込まれている。

 アンナとイリスタは、銅像とメダルを交互に忙しなく見比べていた。


「ふふふ、どうやらメダルの裏面の模様と銅像について、非常に気になっている熱心な新入生さんが多くいらっしゃるようですね。」

ゼライツはそう言うと、銅像に向き直り、説明を始めた。


「『王国の象徴・アーカーシャ』。その意味は、『全てを記録するもの』。我々が学問を通して目指す最終目標です。その姿は生き物の様であり、雲の様に形ないものでもあるとされます。」

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