アンナとイリスタ 2
カーン、カーン、カーン。
船の到着を知らせる鐘の音が、港に響き渡った。
空と海の青さを一層引き立たせるような、真っ白な岩山と街並みが目の前に広がっていた。
中でも一番目を惹くのは、山の中腹に建つグラブダ王宮、またの名をグラブダ王立学院だ。城の周りには樹木や草花が植えられ、人々の憩いの場になっている。
そこから海へ向かって、白亜の建物が階段のように上から下へと並び、船着場に続いている。
世界各国から集まった船が所狭しと並ぶ間を、船乗りたちは忙しなく動き回っている。積荷が運ばれる度に、その賑わいは一層増していく。
船着場沿いの大通りには市場が開かれ、商人たちの威勢の良い掛け声が聞こえていた。
「素敵な国だね!」
イリスタが目を輝かせて言った。
想像を遥かに超えた景色に、アンナはただ、こくこくと頷くしかなかった。
「ご乗船の皆様、長旅大変お疲れ様でございました。グラブダ王国へ到着です。入国手続きは、一般の方は降りられて右手の窓口へ、グラブダ王立学院入学者の方は、降りられて正面の銅像の前でお待ちください。」
街並みにすっかり見惚れていたアンナとイリスタは、放送の声にはっと我に帰ると、急いで荷物をまとめて船の出口へと駆けて行った。
航海期間は一ヶ月。グラブダ王国を終着地として、西の方角から進み、途中五つの寄港地を経由したこともあり、様々な地域や種族の者がこの船に同乗していた。
アンナとイリスタの出身地では見かけたことのない姿の者も大勢いて、二人は改めて、「とても大きな国に来た」と、言葉無く驚嘆するばかりだった。
『グラブダ王国へようこそ! 王国の象徴・アーカーシャ』
そう台座に彫り込まれた銅像の姿は、生き物のような、雲のような、不思議な形をしていた。
「アーカーシャって何だろう?」
「うーん、国にとって大事な物なんだろうけど、よく分からないね。」
アンナとイリスタは、あれこれ予想したが、結局答えは分からなかった。
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