侵蝕 2

 「であれば、龍族以外の地ですか。ヒトの地であれば、神に姿が似ているという我々の威光と魔法のみで制圧出来るでしょう。」

 「龍族ほどに荒れている地という訳ではなく、魔力の消失も報告にはありません。これ以上創世神<ユグドラシル>様のお身体の崩壊を防ぐ、先んじた平定は容易でしょう。」

 「では、我々観測兵が「天翼族の未来」を観測した結果だと、そのように報告しますか、ヘイムダル様。」


 ヘイムダルの未来幻視の魔法が使えない今、現状の兵力と状況のみで判断する他なく、明確な展望が見えない観測兵たちは、答えを出せないでいた。

 「・・・もしくは・・・炎龍ムスプルと我々、どちらも正しく、同時に間違っていたということかも知れない・・・。」

 大穴の先にいたはずの戦友たちの亡骸を、回収することも今は叶わないことに、悔しさを滲ませながら、拠点の天幕を片づけ始めた皆を見回して、ヘイムダルは呟いた。

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