翼たちの中で 4

 ロキは、意識を失う前後に見た過去の光景と、同時に谷底に永遠の氷の中にあると思っていた氷龍の領域が荒れ果て誰も居なくなっていたことを話した。トールもまた、父オーディンの背中越しに見つめていた、氷龍の子を介した交渉の場を思い出していた。


 「戦士長の子、そしてその役を継ぐ者として父オーディンの側に控えていたが・・・。言い訳がましいかもしれんが、その頃の自分が無知蒙昧すぎてな。恥ずかしい話だが、ただ父上が得体の知れない者と話をして、そして守るべき弟が出来た・・・くらいしか覚えていない。その後、今になって見た天翼族の公な記録にも、氷龍長ラーフェイの真意は書かれていなかった。」

 「そうだろうね。僕だって覚えていない。頭を強く打ったお陰で初めて知ったよ。・・・「氷の中」に記録されていたんだ。」

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