消える恩恵 4

 強く頭を岩肌に打ちつけたロキの視界は、うねる波のようにぐにゃりと曲がり、どちらが天か地か、自分が今どちらを向いているのか分からなくなった。

 砕けた翼か角か、定かではないが冷たい氷の塊が、空中を舞っていくのが見える。陽の光に反射して美しく煌めくそれは、揺れる視界の中を彩っていた。

 しかし次の瞬間に光は失われ、自分の手足すら見えない真っ暗な空間に投げ出された感覚に陥った。

 『ああ、これが死というものか。』

 ロキは意識が遠のく直前に、そう直感した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る