消える恩恵 3

 ロキが降りて行った谷底から、チカチカと白い光が明滅した。岩肌の氷に反射しながら、地上へと運ばれたその光は、トールの眼をそっとくすぐった。

 「ロキ。」

 氷の翼を広げて谷底から飛び上がり戻ってくるロキを見つけて、手を振る。その様子をロキも見つけたようで、着地の体勢を整えながらトールへと応えた。

 しかし次の瞬間、ロキの氷の翼がひび割れ、急に風を捕まえられなくなった。ロキは大きくバランスを崩して、岩壁に体を強く打ち付けてしまった。


 同時に、トールの雷槌も急激に重さを増した。重量を軽減させる魔法式が、急に効果を失ったようで、トールの右腕がメキリ、と軋む音が響いた。


 「ぐっ・・・!・・・ロキ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る