消える恩恵 2

 雷槌を地面と擦り合わせて、衝撃で生まれる僅かな火花を暖の頼りにしながら呟いた。

 「ロキ・・・天翼族と氷龍族の間の子・・・。彼の生まれた意味は、私たち天翼族からすれば、私たちが己の矜持が守られている証に過ぎない。しかし、氷龍からすれば・・・どういう意味を持っていたのだろう。」

 龍族など粗暴で野蛮、対話をするに値しないと思い込んでいた天翼族では見えない「意味」を持っていたのかもしれない。

 そうでなければ、鍛え上げたトールですら辛いこの寒さの中、一巫女に過ぎないロキの母を、氷龍の長ラーフェイが側に置いておけるはずがない。


 「ロキはその意味を知っていたのだろうか・・・。幼子の頃に連れてこられたのだから、言葉ではなく、あの織布から父母の思いを汲み取ったのか。それを人目に付かぬ場所に隠して・・・ああ。つくづく、考えが読めないやつだ。」

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