氷の領域 5

 いくつもの氷柱が立ち並ぶ回廊を走り抜ける。父母と共に過ごした記憶は殆ど覚えていないが、それでも見知った道を、高くなった目線で大きくなった足で踏みしめる。

 何者にも砕けるはずのないヨトゥンの氷が、ロキの走る勢いでカツカツと欠けていく音ばかりが響いていく。


 その音にロキはより焦りを感じていた。

 「いつからだ。いつから・・・氷龍ヨトゥンはここから居なくなっていたんだ。」


 回廊の果てに、一際巨大な氷柱が、ひとつの扉を塞ぐ鉄格子の様になって床から生えていた。扉の向こうは氷龍ヨトゥンの長ラウフェイの座する玉座の間だ。


 いつからこの氷が生えているのかは分からないが、ただ一つ言えるのは、内側から開かないように氷で閉ざされていることから、今現在は部屋の中には生きている者はいないということだった。


 「どこに・・・行ったんだ。龍族が自分の領域を離れることなど、到底あり得ないと・・・スルトもそう言っていたじゃないか。」

 ロキは意を決して、その強力な氷を反転魔法を使い、砕き溶かした。

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