狂乱の渦 2

「・・・この騒ぎすらも、ウルズ様の・・・創世神<ユグドラシル>様の声に従った結果だと言うのか。・・・神の声を聞くことが出来ないのがもどかしい。」

背の翼を顕現させては、近衛兵長は呟いた。街の中では大きく羽ばたく機会はないが、尚も鋭く伸びた風切羽は、戦場を駆け回る兵士たちにも負けておらず、今すぐにでも勢いよく空へと飛び上がることが出来そうだ。


「トール様は役立たずだ!」

「あの『雷槌のトール』は、龍に絆され死んだのだ!」

「我らの力の象徴、戦士長の牙を抜いたのは誰だ!」

「「「氷龍の子、ロキだ!」」」


「創世神<ユグドラシル>様の加護を書き換えたのは誰だ!」

「「「盲目の記録者、ヘズだ!」」」


「「「我々は!『創世神<ユグドラシル>様の守護者』なり!」」」

誰とも知らぬ声が、どこかから飛び出しては街全体を飲み込んでいった。

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