世界の主 2
『世界に散った我が身は、酷く疲れてしまった。一度の暇のため、返してもらうぞ。』
誰の耳にも聞こえない、しかし確かに感じたその意志の声は、話す者たちの言う神という存在のものだった。
原初の海の風に乗って、ヘズとスルトの元にもその声は届いていた。
「ふん、なんと身勝手な神め。そこに生きる者たちなぞ、知ったことではないと言う。」
「そんな・・・たった・・・たったそれだけ・・・なのですか。私たちは創世神<ユグドラシル>様のために戦い傷つき、それでも貴方を信じて生きてきたというのに・・・。見返りが欲しかった訳ではありませんが、それでも安寧があると信じていたんです。ああ、どうして・・・。」
ヘズは思わず耳を塞ぐ。その意志の声は耳を通さずとも、彼女の中に溶け込んでくる。この場所は、既に元の理から外れているということを、まざまざと見せつけてきていた。
「神なぞ碌なものでは無いな。だが、それを天翼族や我が一族に伝える術は、我々に最早ありはしない。残酷なものだな。唯一、ロキとトールが気づいてくれれば良いが。」
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