世界の主 1

 天翼族と龍族ムスプルの戦端において、突如として空いた大穴の周囲は、しんと静まり返っていた。そこに居たはずの者たちの、驚嘆と悲鳴は既に深く大穴の奥底に吸い込まれ、誰一人として戻っていないようだ。


 唯一、その上空を飛んでいくのは、翼と能力に一切魔力を含んでいない唯の小鳥たちだ。

魔物と呼ばれるものたちとは異なり、身体に魔力貯蔵器官を持たず、魔力の有無が生命維持に関わることが無い動物たちにとって、この大穴は単なる自然の地形変動だと理解しているようで、いつもと変わらぬ様子で動いていた。


彼らは伏せ倒れている魔物たちを目敏く見つけると、その身体を啄み始める。呻き声すら上げる力も無い魔物たちは、その痛みにただ震えながら、身体が冷たくなっていくのを待つばかりだった。

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