守護者たちの睥睨 1
翌早朝、まだ薄暗い街の入り口で、一人の兵士が発見された。全身は焼け爛れ、纏う装備がほぼ脱落し、息も絶え絶えの状態で壁にもたれかかる彼は、昨日意気揚々と出発した兵士の一人だった。
「龍族ムスプルは使者を送る、そちらも相応しい者で受け入れよ」
火傷の跡で兵士の身体に刻まれたその文章は、拒否するという選択肢など無いことを天翼族に見せつけるのに充分だった。
「使者だと。龍族が何を考えている。奴等は真っ当な話し合いなどする気はないだろうに。たった一人を残して全滅させ、その最後の一人すら酷い姿で帰してくるくらいだ。」
「そもそも先に仕掛けて来たのは龍族ムスプルの方だ。それにより、天翼族の戦士たちが多くやられている。今更何を話すことがあるのか。使者など葬り去ってくれる。」
「我らの攻撃で奴等が弱っているというのならば、好都合。龍族ヨトゥンも加えてムスプルを追撃し、徹底的に奴等を叩くのみだ!」
「戦士長トール。急ぎ新たな隊を編成して…」
戦略会議の場で、天翼族の高官は苛立ちを露わにしていた。
会議室正面の壁には創世神<ユグドラシル>と呼ばれる存在が巨大な樹のような姿で描かれている。その根本に並ぶように座る高官たちは、作戦の指揮を取っている戦士長トールを睨みつけている。
まるでトールの手腕不足とでも言わんとするかのようなその目に、臆することなくトールは向かい合っていた。
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