第75話 テスト中
キーン、コーン、カーン、コーン……。
チャイムが鳴り止んだのとほぼ同時に、ガラガラッ、と教室の引き戸を開ける。
家から学校まで全力でダッシュしてきたせいで呼吸がつらい、けど、膝に手をついて汗を滴らせながら、教壇に立つ豊橋先生を見上げる。
「セーフですよね?」
「アウトだ。出てけ」
「んなっ! 待ってください! 寝坊とかじゃないんですよ! チャリがなかったんです! 学校に置きっ放しで、それ忘れてて……。マジお願いします、先生……」
「あぁ……。わかった。早く座れ」
「あざっす!」
先生からテスト用紙を受け取る。
みんなはもうテストに取りかかっていて、その邪魔にならないようにということで、先生の指示に従って、いったん教壇にのぼって、窓側最前列から二番目の、自分の机へと向かう。
土谷に、おはようって挨拶をしたかったけど、今日は黙っているしかない。
教壇から下りて、自分の机に鞄を置きかけて、そこで体が硬直してしまった。
驚きのあまり思わず二度見してしまう。
そこは、いつだって空席のはずなのに。
「ええっ! お前っ……。日崎っ! お前、何でっ……」
その瞬間、喉のあたりに何かがぶつかった。
殴られたような衝撃に言葉が詰まる。
一瞬のことで何が何だかわからなかったけど、いつの間にか、先生が俺の胸ぐらをひねり上げていた。
「黙れ。テスト中だ。ぶち殺すぞ、この野郎」
「はい……。すいません……」
「座れ」
「はい……」
静かに椅子を引いて腰を下ろす。
先生は完全にキレていて、続けて低い声で威圧してくる。
「筆箱!」
「はいっ!」
シャーペンと消しゴムを用意して問題を解き始めてもなお、先生は真横に張りついたままで全然離れようとしてくれない。
ふと気づくと、目の前の席で日崎が小刻みに肩を揺らしていた。
笑いをこらえているらしい、細かく息のもれる音がする。
ちっくしょー。半分はお前のせいだかんな、わかってんのかよ。
それとなく、ちらっと顔を上げてみると、やはりまだ眉間にしわを寄せた先生がくっそ不機嫌そうな顔でこっちをにらんでいた。
ぴんと背筋を伸ばす。
先生……。やっぱ俺にばっかり厳しすぎないっすか?
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