第66話 不登校
転校先の中学では、中途半端な、冬の時期の転校生ということで珍しがられて、いろいろと詮索されるうちに、どこかから漏れたらしい噂のせいで、暴力事件を起こして転校してきたらしい、とバレてしまって、からかわれたり、やたらと怖がられたりして、少し仲良くなりかけていた子にも距離を取られるようになったことで、心が折れてしまって、半月と通うことなく不登校になってしまった。
それでも、そこの中学の校長先生が、こっちの事情をくんでくれてか、あるいは、ただ単純に厄介払いをしたかっただけなのかはわからないけど、授業には出ないで、テストも受けないままなのに、三年生に進級させてくれて、ずっと不登校のままだったにも関わらず、普通に卒業させてもらえることになった。
そんな日々の中、私が学校に行かなくなったことで、母の日常にも大きな変化が起きていて、事件のことが噂話として広まるにつれて、近所の人たちとギクシャクするようになっていたらしく、憔悴した母を見かねた父から、町を出ようか、という提案があって、引っ越しをすることになった。
ほとんど誰にも、何にも言わずに、半分夜逃げをするみたいにして引っ越しを済ませて、知らない町で、新しい家に住むようになって、高校では事件のことを知る人もいないし、迷惑をかけた父と母のためにも、気持ちを新たに頑張って学校に行こう、と思っていたのだけど、授業中の教室の雰囲気だったり、筆記音だったり、チャイムだったり、誰かの笑い声だったり、そんな些細なことがきっかけで、たまに、強烈に中学のときのことを思い出すことがあって、とくに、宮火にキレて暴れてしまったときのことを思い出してしまうと、それを振り払おうとして何も考えられなくなって、胸がしめつけられて、息苦しくて、気持ち悪くて、そんなことが繰り返しあったことで、やっぱり学校に行きたくない、休んでいたい、戻りたくない、そう思うようになってしまっていた。
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