第50話 とても悲しいこと

 夏休み明けは自殺する子供が急激に増える、という話を聞いたことがある。

 国の調査によると、実際にそういうデータが出ているらしい。


 自ら命を絶たなければならなかった子供たちには、その一人ひとりに複雑な事情があったのだろうけど、一年のうちで、毎年毎年、九月一日の前後に子供の自殺者が集中している、ということは、突き詰めれば、学校に行くくらいなら死んでしまおうかな、と思い悩んだ末に、つらい決断をするしかなかった子供たちがたくさんいて、今も、そうして亡くなっていった子供たちと似たような悩みを抱えて、陰鬱な日々を過ごしている子供が大勢いる、ということなんだろう。


 とても悲しいことだけど、きっと、この問題は何年経っても解決されやしないんだ。


 テレビのニュース番組を見ているとごくたまに、三十秒くらいの短い時間で、中学生が遺書を残して亡くなっているのが見つかりました、警察が詳しく捜査をしています、みたいな、そんな感じの報道がされることがあるけど、小学生の頃は、何だか現実離れした話を聞かされているような気がして、ふーん、と思うくらいでとくに意識することもなかったのが、今ではそのたった三十秒が嫌で嫌でたまらなくて、その中学生の子はどんなに苦しかったんだろうと考えてしまうと、胸の奥がズキズキ痛む感覚があって、呼吸がしづらくなってきて、頭痛がしてくることもあって、いつまたイジメ自殺関連の報道があるんじゃないかと思うと胸の痛みに襲われるのが嫌で、ニュース番組自体見るのを避けるようになっていた。

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