第46話 焦げ跡

 次の日、宮火は何を気にすることもなく、普通の顔をして学校に来ていた。


 また言い争いをして大げさな噂が立つのも面倒だし、今回のことは、話をつけると言ってくれた雲浦先生に任せよう、という思いもあって、こっちからは何も言わなかった。


 とくにこれといったトラブルもなく六月に入って、中間テストの答案返却が始まり出した頃、授業中、ふと自分のリュックに目をやると、何か黒っぽい、妙な汚れがついているのに気がついた。

 指先で触れてみてはっとする。

 汚れじゃない。小さな穴だ。直径一センチくらいの小さな丸い穴があいている。

 焦げ跡があることから考えても、間違いなくタバコの火が押しつけられたせいでできた穴だ。それも一つじゃない。近くにはあと三つ、同じような穴がある。


 宮火だ。またあいつがやったんだ。

 雲浦先生から叱られてもまだ懲りないのか、あのクズ女。


 放課後、いち早く教室を出て、職員室の前で雲浦先生が戻るのを待つ。

 少しして、廊下を歩いてきた先生を見つけて駆け寄る。


「先生。ちょっといいですか?」

「日崎さん……。私に、用事?」

「また宮火に嫌がらせされたんです。話、聞いてもらえますか?」

「そう……。どうにかしないとね……」


 雲浦先生は廊下を行き交う生徒たちを気にしてか、きょろきょろと首を回してから、声をひそめて言う。


「場所、変えましょうか」

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