第45話 雲浦

「失礼します」


 職員室の引き戸を後ろ手に閉めて、担任の雲浦先生を探す。

 いた。


「雲浦先生」

「あれ? 日崎さん」

「これ、見てもらえますか?」


 表紙の焼けた教科書を手渡す。


「わっ。どうしたの、これ」

「宮火さんにやられました」

「宮火さんに? 何かあったの?」

「よくわからないんですけど、何か嫌われてるみたいで」

「理由もないのこんなことする?」

「私もそう思います。でもこれだけじゃなくて、上履きを隠されたこともあるし、ちょっと前は体操服を汚されました」

「ええっ……。そう……。うーん……」

「先生から、やめるように言ってもらえませんか?」

「わかりました……。一度じっくり話を聞いてみないとね」

「お願いします」

「これは私が預かっておくから。えーと、国語……」


 雲浦先生は、机に並べられた本の中から国語の教科書を抜き出してくれる。


「はい。日崎さんはこれ使って」

「ありがとうございます」

「また何かあったら、すぐに報告してね。遠慮しなくていいから」

「はい。失礼します」


 頷いてくれた雲浦先生にしっかり頭を下げる。

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