第35話 就寝
その少しあとでおじさんにも、泊まっていっていいですか、と聞いてみるとおばさんと同じく、何をいまさらといった感じですごくあっさりした反応だった。
「そんなことより風呂だ、風呂。銭湯行くぞ。付き合え」
と誘ってくれたおじさんの一言でごちゃごちゃした話は吹き飛んで、みんなで銭湯に行こう、という話になった。
もちろん民宿にもお風呂はあるのだけど、広々としたつくりではないため、大抵の宿泊客には近くの銭湯を使ってもらっている、ということらしかった。
しかしながら日崎は、ひったくりにやられた腕の擦り傷が気になるから、とおじさんに謝って、おばさんも、銭湯は恥ずかしくて苦手、ということで、おじさんと二人で出かけることになった。
湯船につかっている間、おじさんからいろいろと話を振られて身の回りの話をするうちに、じいちゃんの話になって、その流れから将棋の話になり、
「俺と一局指してみるか?」
というおじさんの提案で将棋をやることになった。
民宿に帰ってくるなり、年季の入った足つきの将棋盤に駒を並べて対局を始める。
おじさんは、するめをあてにビールを飲みながら、というスタイルで、途中から結構酔っ払ってしまっていたけど、三戦やって三敗、どうにも勝てないということで、二枚落ち、四枚落ちのハンデをつけてもらったのに、負け続けて五連敗したところで完全に心を折られて将棋はおしまい、ということになった。
日崎はずっと顔を見せなかったけど、おばさんによると、お風呂上がりに扇風機の前でにこにこしてカメラを触っていた、という話で、先生との電話終わりに不機嫌そうだったから少し気にかかっていたけど、案外、何でもなかったらしい。
そんなこんなで、おじさんたちに、おやすみなさいと挨拶をして、十一時過ぎには二階の客室で横になることにした。
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