第18話 全然知らない駅

 日崎に続いて電車を降りたのは、名前も聞いたことのない駅だった。

 閑散としたホームを見回す。

 何がどう違うというわけでもないのだけど、全然知らない駅ってだけで、ずいぶん遠くに来たような気がする。

 前にも来たことがあるのか、単に興味がないのか、日崎はさして珍しそうに首を回すこともなくすたすたと歩いていく。


 短い階段を下りると、少し先に改札機が並んでいた。

 ポケットの切符を取り出して、あっ、と声をもらす。そういや適当に買ったんだった。


「悪い。俺、精算機使うから」


 日崎が足を止めて真顔で見返してくる。


「だから何?」

「へっ? いや、そのへんで待っててくれたらいいだろ」

「ストーカーのことわざわざ待つバカいると思う?」


 日崎はスマホをかざして改札を通り抜けると、もう振り返ろうともしない。

 うん。そっか。そりゃそうだね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る