第7話 学校嫌い
「手助け、なんて言ったって、日崎って病気なんですよね? そんなの俺にどうしろって言うんですか。医者に言ってくださいよ」
「日崎の症状は、医者がどうにかできるようなものじゃない」
「えっ……。あいつ、そんなに悪いんですか?」
「そう思うと、少しは同情してやれるか?」
「まぁ、少しは……」
「すまん。言い方が悪かったな。単純に、薬とか手術で治るような病気じゃないってことだ」
「へっ? はあ……。つまり、えーと……。結局のとこ、あいつの病気って何なんですか?」
「PTSDって聞いたことあるか?」
「ああー。はい。あれですよね。えーと……、何でしたっけ?」
「いや、まぁそれはいい。これは私の勝手な判断なんだが……、日崎の症状は、学校嫌いって表現が近いように思う」
「学校嫌い? 待ってくださいよ。日崎って、体が弱くて学校休んでるんじゃないんですか?」
「日崎自身はいたって健康だ。体が弱いわけじゃない」
「えっ……。でも先生、前に難しい病気だって言ってたじゃないですか」
「何も間違ってはないだろ。精神的な不安も、度が違えば難しい病気のうちだ」
「そりゃあ、そうかもしれませんけど……」
難しい病気、なんて聞かされたら、よくは知らないけど、長ったらしい病名がついていて、全身麻酔して何時間もかけて手術しなきゃならなくて、みたいなものを想像するのが一般的なような気がする。
「日崎は学校が嫌で休んでいるだけの不登校だ、そんなふうに私が言ってしまったら、日崎が学校に来てくれたとしても、みんなが変に気を遣いかねないだろ。だが病気ということにしておけば、そうそう深く突っ込むような無神経なやつは少ないだろ」
「なるほど……。でも、つまりは日崎が、自分で学校に行くの嫌だって言ってるんですよね? じゃあ、そんなもんどうしようもないじゃないですか」
「そのどうしようもないことを、どうにかするんだよ」
先生は車を止めてエンジンを切る。
フロントガラスの向こう側には、もう日崎の家が見えていた。
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