第2話

 学校に到着してから一時間少々が経過していた。

 入学式も恙無く終わり、今は式場である体育館からクラス毎各教室に場所を移しての高校初となるホームルームを実施中であった。

 学校に辿り着くまでの苦労に比べ、その敷地内に入ってからは何故だか知らんが妖による襲撃はなく、穏便に今を迎えられていた。正直、拍子抜けした感は否めなかったが、都合は人それぞれ、いや妖それぞれと言えるので、そんな事も有るのかと別段問題視はしなかった。そもそも本日、俺はこの学校に入学式の為訪れたわけで、妖と戯れるのが目的ではない。はっきり言って、妖の都合など知ったこっちゃないし、関わらずに済むならそれに越したことはないのだ。出会ったばかりの級友達を前にボロを出すのは御免被りたいものだからな。

 要するに少なくとも俺的には安堵すら覚える好都合な状況であり、文句を懐く必要が無かったわけである。

 しかしながら、世の事象が均衡の上に成り立っているからなのか、はたまた単に俺が運を持ち合わせていないだけなのか。兎にも角にも、順調になりかけた高校生活スクールライフはやっぱり前途多難の様相をみせるのであった。

 解っていた……解っていたさ。俺とて伊達に小中学校と集団生活の中で霊能体質と付き合ってきたわけではない。その隠匿が如何に困難を要するものであるのかを、身を持って知っているつもりである。だから、このまますんなり何事もなく人間関係を築いていくのが困難であろう事など解っていたのだ。

 それでもなあ、折角、妖共が大人しくしてくれているのに、まさかこんな形で秘密漏洩危機を迎える事になろうとは、流石に想像が及ばなかったというのが本音なのは否めなかった。

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