第2話 崩れ行く音
輸送機到着まで残り九時間、本部は至って平和だった。
「輸送機レーダーに捉えました。到着まで残り九時間」
「了解。第二種警戒態勢を維持。空中警戒を厳となせ」
オペレーターにそう伝え、トーマスは目を閉じる。
「お疲れですか? なら少し休んだ方が……」
秘書のダジェスが朗らかな笑顔で言ってくる。
「いや、大丈夫だ。少し……嫌な予感がするんだ」
「嫌な?」
「ああ。なんとなくだがな」
すると、指令室に警報が鳴り響く。
「司令!」
「どうした」
「対天使用隠密装置の出力が突如低下しました!」
「なんだと!?」
「このままでは天使に見つかります!」
「…………解除だ」
「えっ?」
「対天使用隠密装置を解除。第一種戦闘配置と住民に避難勧告を発令。シールドを最大出力で展開。アカリたちが戻って来るまで凌げ」
「しかし、付近にも天使がいます。解除すれば見つかります!」
「どっちにしろ、対天使用隠密装置が止まれば見つかるんだ。解除で良い」
「りょ、了解」
「ダジェス」
「はい」
「……この戦いが終わったら出力低下の原因を探ってこい。もしかしたら裏切り者がいるかもしれない」
「了解しました」
「あとは天使に見つからないことを祈るだけか」
トーマスは気持ちを落ち着かせるために髭を触る。
◆
◆
場所は変わって輸送機。
「機長、基地をレーダーに捉えました。到着予定時刻九時間後です」
「了解、進路そのまま。天使への警戒を怠るなよ」
「はっ!」
「お二人さん、こちら機長です。あと九時間ほどで目的地へ到着します。準備等お忘れないようお願いします」
マイクを通してアカリたちに告げる。放送で一方的に話しているので、アカリたちからの返答はない。
「この旅ももう終わりか。寂しいねぇ」
「今の時代、基地の外に出れること自体が貴重ですから」
「俺たちがそうするしかないけど、今のところアカリちゃんたちに任せっきりなのがな」
「システムの都合とは言えやるせないですよね」
「子供に命がけの仕事させるって、嫌だな」
「ですね」
「まぁでも、殺させないために俺たちがいるんだ。俺たちで守るぞ。人類の希望を」
「分かってますよ。そんなこと。じゃなかったらさっき死んでった奴らが報われないですよ」
「……大人だな」
「機長も大人でしょ。何年生きてるんですかほんと」
「帰ったら酒飲むか」
「良いんですか? このご時世お酒高いですよ?」
「人生の先輩からの奢りだ」
「……ありがとうございます」
「さっ、休憩時間だ。副機長」
「了解です」
副機長が操縦室から出ていく。
◆
◆
時は経ち、基地指令室。
「天使、南西から多数接近」
「第一航空部隊を迎撃に向かわせろ」
「第二迎撃システム被弾。被害状況確認中」
「司令! 北東からさらに天使が!」
「……第二、第三地上迎撃隊を北東部へ回せ。被害状況の確認は後だ。それと、輸送機に緊急通信。急がせろ」
「了解!」
◆
◆
同時刻、輸送機。
「さて、基地までもうすぐ……ってなんだ?」
「基地からの緊急通信です!」
「なんだって!?」
「現在、天使の攻撃を受けている。だそうです」
「攻撃だ!? 対天使用隠密装置はどうした!」
「どうしたって何も、早く基地を助けないと……」
「助けるたって、こっちの戦力はほとんど残ってないんだ。万が一天使に襲われれば……」
「クソっ!」
機長と副機長はハンドルを握ったまま固まってしまう。
「私が行きます」
と、二人の耳にアカリの声が入る。
「行くってお前、まさかここから飛び降りる訳じゃないだろうな」
「……」
機長の言葉にアカリが首を縦に振る。
「バカか!? 今地上千三百メートルだぞ? いくらバイアスだって耐えられるわけがない!」
「それに、この付近には山がある。陸路よりこっちの方が速いよ」
「でもそれじゃ基地が……!」
「大丈夫。トーマス司令を信じるんだ。あの人はリスクを考えないような人じゃない。きっと何か考えがあってアカリちゃんたちを送り出したんだ。じゃなかったら、基地防衛の最高戦力を二人とも送り出したりしないよ」
「…………」
「俺たちも精一杯頑張るよ。急ぎたい気持ちもわかる。でも今は耐えてほしい」
「……了解」
「ありがとう。降りれるポイントが見つかったらそこでバイアスを下ろす。それまでに出撃出来る準備をお願い」
「はい!」
アカリは頷いて操縦室を出る。
「お前、今のかっこよかったぜ?」
「そんなこと言ってる場合ですか。仮にも機長でしょ? あなた」
「そうでした。さぁ、救世主になりに行きますか!」
「了解!」
「全輸送機へ通達。これより、バハムートは基地防衛の為部隊を離脱する。各自警戒態勢を維持。以上だ。健闘を祈る」
機長が言葉を発したのち、大型輸送機バハムートは加速を始めた。
◆
◆
「第一航空部隊、壊滅。天使、第二防衛線を突破!」
「このままではマズいな……回せる部隊はいるか。でないとシェルターに天使が向かうぞ」
「現在、全部隊が天使と交戦中で……」
「基地の火力を第二防衛線付近の天使に集中。少しでも数を減らすんだ」
「了解」
「司令! バハムートの加速をレーダーで捉えました。到着予想時刻を再計算。バハムート到着まで後五時間です!」
「…………頼むぞ」
◆
◆
「タツミ。出撃の準備を」
アカリがベッドで横になっているタツミに話しかける。
「わぁってるって。でも、強い弾丸はあまり使えないぞ? 一般人が巻き込まれる」
「私のARを貸すわ。ソルジェーも近接戦闘出来ない訳じゃないでしょ?」
「それは勿論。でも、ソルジェーは身軽に動くことを想定してないからな」
「分かってる。でもお願い」
「バイアスの援護は状況によって出来るか分からない。それでも良いか?」
「私を誰だと思ってるの?」
「しに……」
「バイアスのパイロットよ」
タツミの言葉を遮ってアカリは格納庫へと向かった。
「ハハッ、さすが《死神》(エースパイロット)さんだ」
「聞こえてるわよ」
アカリが閉まりそうな扉の隙間から顔を覗かせる。
「……別に。何も言ってませんけど?」
「あっそ」
「ふぅ……」
タツミは息を吐いてから仮眠室を出た。
◆
◆
「まもなく、基地に到着。お二人さん。準備は?」
『バイアス、いつでも行けます!』
『ソルジェーも行けます』
「それじゃ今から降下する。合図したら出撃だ」
『了解!』
二人が同時に言葉を発する。
「天使に見つかるなよ」
「分かってます」
副機長の操縦で、バハムートが降下を始める。
◆
◆
バハムートの降下とほぼ同時刻。
「天使がシェルター地下通路直上に到達! 止められません!」
『ドゴーン』
爆発音がモニターを通して鳴り響く。
「被害状況は!?」
「地下通路が大破。避難中の住民の生死不明……」
「迎撃急げ! これ以上犠牲者を増やすな!」
『バキーン』
地下通路直上の天使が爆散する。
「司令! 二人が戻ってきました!」
バイアスとソルジェーがモニターに映し出される。
「良かった……」
「戦闘中の部隊を後退させろ! 奴らをここに引きつけてアカリたちに叩かせる」
「了解。現在戦闘中の部隊は基地まで後退して天使を引きつけてください。アカリ、タツミ両パイロットは地上部隊が引き付けた天使の撃破を」
オペレーターが涙ぐみながらも指示を出す。
「聞いた? 行くわよ!」
「分かってる」
アカリがバイアスを加速させソルジェーもそれに続く。バイアスは《大型剣》を背中にマウントすると、腰にマウントされたハンドガンを両手に持つ。アカリは基地に当てないよう慎重に狙いを定める。二つの照準が天使に固定される。それを見てアカリはハンドルのスイッチを押して弾丸を発射する。見事命中に天使が爆散する。
「よく動きながら当てるよ。化け物か?」
「聞こえてるわよ」
タツミの驚きの言葉にアカリが返す。
「ていうか、あんたも銃持ってるんだから撃ちなさいよ!」
「こっちは動きながら撃つ才能ないんですけど?」
「まぁ、なんか的が止まったから撃ってるだけなんだけどね」
そう言って、弾の切れたハンドガンを投げ捨てる操作をアカリはする。そして、《大型剣》を取り出しさらに加速する。
「やっぱ《死神》さんは違うわ」
ソルジェーはARを地面に投げ捨てると、背中にマウントされたスナイパーライフルを取り出す。
「こっちはこっちの仕事だ」
タツミはバイアスから遠い位置の天使を倒していく。
「はぁ!」
《大型剣》が次から次へと天使を切り裂いていく。
「上級がいないのが幸いね。これならすぐ終わる!」
破壊された戦車を踏みバイアスは宙を舞う。落下する間に天使をさらに倒していく。そして、すぐに最後の一体を倒すことに成功する。
「天使、反応消えました」
「補給を済ませ次第、第二種警戒態勢。けが人の救護と輸送機の受け入れ準備だ」
この襲撃で受けた損害はとてつもなかった。当然、バイアスとソルジェーを送り出したトーマスに非難の声が殺到したが復興の忙しさがそれを黙らせた。
この襲撃で亡くなった人々は軍人と非戦闘員で約二千人。これは生存者十万人の五パーセントにものぼる。そして、資源調達の遠征で亡くなった軍人は十名。
数日後、共同墓地にて犠牲者を弔う儀式が行われた。
警戒に当たる人間以外の全てが簡素に作られた聖堂に集まっていた。
「…………」
「…………」
黙とうをささげる者と涙を流す者。様々な人間がそこにはいた。
三十分もしない内に儀式は終わった。人々はまた復興への作業へと戻っていく。
「アカリ……ちょっと良い?」
「えっ、うん」
レミがアカリを呼び止める。人目のない暗い場所にアカリは連れていかれる。
「ねぇ、どうしたの? さっきか……」
「なんで! なんでもっと早く来れなかったの!?」
「えっ?」
「アカリがもっと早く来てればお父さんたちは死ななかった!」
「っ……」
レミの顔には涙が二筋流れていた。
「ねぇなんで? 黙ってないで教えてよ!」
「それは……」
「……分かってるよ。通信を受けた場所には山があるってことぐらい」
「…………ごめん」
「……私もごめん。言い過ぎた。アカリだって辛いのに……私戻るね!」
レミは無理矢理笑顔を作ってその場から走って行った。アカリはしばらくそこから動けなかった。
「…………はぁ」
自室に戻ったアカリはベッドに倒れる。
「私の……所為だ。全部!」
アカリは拳をベッドに叩きつける。
「…………」
枕に顔を埋めている間にいつの間にアカリは眠ってしまう。
「…………ん。寝てた?」
時計を見ると、三十分も寝ていなかった。
「はぁ…………」
ベッドから降りて椅子に座る。
「あっ……」
アカリは突然、キーボードを出しモニターに天使についての研究資料を映し出す。
「天使に感情が伝えて、攻撃を……」
一目散にキーボードを叩きアカリは理論を構築していく。
「これが成功すれば、これ以上悲しむ人を出さないで済む。……でもほんとに天使に意思はあるの?」
今までの記録では天使に意思がある兆候は見られなかった。アカリの立てた仮説は無謀にも思えた。しかし、アカリはバイアスの動力源が天使のコアであることを思い出した。
「そうだ、バイアスを使えば天使と通信出来るかもしれない」
アカリの考察は何時間にも及んだ。
「ふぅ……あとはこれを試すだけ。私の研究を無駄にはしない」
アカリは格納庫へと向かった。
「あの、すいません」
「はい、どうしました?」
入口側にいた作業員がアカリの声に反応し顔を向ける。
「バイアスのコアって見ること出来ます?」
「えっ、まぁ、大丈夫ですけど……コアなんか見てどうするんです?」
「ちょっと、調べたいことが……」
「……分かりました。どうぞ」
作業員についていくと、拘束具を装着しているバイアスがおり、側にはソルジェーもいた。二機の周りでは今も数名の作業員が装甲のチェックしていた。
「ちょっとこちらでお待ちいただけますか? これから装甲を外さなければいけないので」
「分かりました」
バイアスをチェックしている作業員にアカリがコアを見たいという旨を伝えていく。
「作業員の許可が取れました。装甲が取れ次第、声をかけるそうです。では、私はこれで」
「ありがとうございます」
作業員はヘルメットを外して一礼すると、アカリの元を去っていく。
五分ほどして別の作業員がアカリの元へやってくる。
「お待たせしました。どうぞこちらへ」
「あの、通信ケーブルってもらえます?」
「確か修理で外した奴がまだ使えたはずです。持ってきますのでお待ちください」
一分もしない内にケーブルが届けられる。
「何をするか分かりませんが、変なことしないでくださいよ?」
「分かってます」
「おーい、休憩するぞ」
「はーい」
作業員の一声でバイアスとソルジェーの整備をしている人々が消えていく。
「さてと、やりますか」
むき出しにされたバイアスのコアは赤く煌めいていた。
「こんな風になってたのね。初めて見たけど綺麗」
あまりの綺麗さにアカリは当初の目的を忘れそうになる、
「危ない危ない。じゃあよろしく頼むわよ」
アカリは通信ケーブルをコアに付け反対側を通信のテストをする機械に取り付ける。機械を操作し適当な信号を送る。
『…………』
コア側から反応があれば何かしらの信号が機械の画面に映しだされるのだが、何も反応がない。
「うーん。信号がダメなのかしら」
信号の形式を変えて再び信号を送る。しかし、信号が返ってくることはなかった。
「ダメかぁ……うーん。もう少し研究が必要ね」
通信ケーブルをコアから外し、作業員の休憩スペースに声をかける。
「ありがとうございました」
「また何かあったら声かけてください。まぁ、次からは予定を伝えていただけるとこちらとしても対応しやすいのでよろしくお願いします」
「分かりました。突然すいませんでした。これからもよろしくお願いします」
「いいえ、こちらこそ。いつも守ってもらってるので。何か手伝わせてください」
「はい! じゃあ私はこれで」
アカリが格納庫を出ると、そこにはレミがいた。
「あっ……」
「あら、アカリがここにいるなんて珍しいわね」
「い、いやちょっとね」
「また変なことでも考えてるの?」
「えっ、いや別にそんなこと」
「私、アカリの考えてることなんて手に取るようにわかるんだから」
「…………」
「もうお父さんたちのことじゃ怒ってないよ。お父さんたちの分まで生きるって私決めたの」
「…………」
「だから、アカリも気負いすぎないでね? アカリはすぐ影響されるんだから」
「……うん。分かった」
「じゃあね。ちゃんとご飯食べるんだよ?」
そう言うと、レミは格納庫へと姿を消す。
「お父さんたちの分まで生きるか……私も見習わなきゃ」
◆
◆
『六月十五日 バイアスのコアに対する通信実験、反応なし。更なる応用が必要と思われる』
今までの進展ない記録にようやく希望の見える記録が追加された。
「絶対に成功させなきゃ」
アカリは無心にキーボードを叩くが、いつの間にか眠ってしまう。
「うーん。むにゃむにゃ」
翌朝、天使の接近を知らせる警報がアカリの睡眠を妨げる。
「アカリ! 出撃(で)るぞ! 起きろ!」
タツミがアカリの部屋の扉を開けて叫ぶ。
「むにゃあ」
「早く起きろ!」
タツミは壁に掛けられてハンガーをアカリの頭に叩きつける。
「痛ったぁあああい!」
「天使が来たって言ってんだよ! 早くしろ!」
「天使!?」
「そう言ってんだろ! 俺は先に行くぞ」
そう言うと、タツミは部屋を出ていく。
「ったく、女の子なんだから優しくしなさいよ」
頭をさすりながらアカリは格納庫へと向かう。
◆
◆
「敵、なおも進行中。まもなく第一防衛線に到達します」
「迎撃システムの状況は」
「修復中ですが、第二砲台が使用可能です」
「それで十分だ。射程に入り次第攻撃開始」
「了解」
『ソルジェー出撃準備完了』
「了解。カタパルト正常、出撃してください」
「タツミ、ポイントC-3で第二砲台と共に迎撃してくれ」
『了解』
しばらくして、アカリの声が指令室に響く。
『バイアス出撃準備完了』
「了解。カタパルト正常。出撃してください。展開予定地をそちらに転送します」
『了解。バイアス出撃ます!』
「バイアス、展開確認。《大型剣》(フラガラッハ)展開します」
砂埃を立てながら着したバイアスのすぐそばに《大型剣》の入った大きな箱が地面からせりあがる。
「さぁて、行くわよ!」
《大型剣》を手にしたバイアスは地面を勢いよく蹴り、走り出す。天使の一体を踏み台にして、飛び上がり、ほかの天使を切り裂く。そして、踏み台にされた天使は、ソルジェーが放った弾丸が命中し爆散する。他の天使も砲台の射撃とアカリの《大型剣》で全部倒される。
「今日も上級がいないのかしら?」
『そういうこと言うと、ほんとに出てくるから冗談でも言うなバカ!』
『ピーピーピー』
「何? 敵は全部倒したはず……」
『おい、アカリ、後ろ!』
「後ろ?」
バイアスが後ろを向こうとした瞬間、バイアスに衝撃が走る。
「きゃっ!」
「何があった!?」
指令室のトーマスが叫ぶ。
「わかりません。ですが、倒したはずの天使が突然復活しました!」
「ガブリエルか……どこかに本体がいるはずだ。音波攻撃される前に奴を見つけろ!」
「アカリ、こっちは本体を叩く。雑魚をなんとかしてくれ」
『了解』
「レーダーに映ってないってことは範囲外にいるなぁ」
タツミはスコープの倍率を上げるが天使の姿は見えない。
「どこにいやがる」
すると、ソルジェーの装甲にヒビが入り始める。
『ピーピーピー』
「チッ」
タツミはソルジェーを移動させ敵の攻撃範囲から外れる。
「音の発信源さえわかれば」
『敵の位置特定しました。ポイントB-2の直上三百メートルです!』
「了解。急行する」
通常装備の射程外に存在する天使を倒すためにタツミはバイアスを走らせる。
「アカリ、雑魚は頼んだぞ」
『了解。お任せあれ!』
ポイントに到着し銃を上空へ向ける。しかし、またソルジェーの装甲が危険な状態であることを知らせる警報が鳴り響く。
『装甲が保ちません。急いでください』
タツミはスコープの倍率を限界まで上げてギリギリ見える敵を狙うのに手間取っていた。
『タツミ早く! このままじゃソルジェーが!』
「分かってるよ! 黙って雑魚倒してろ!」
そしてようやく、照準がロックされ、タツミはハンドルのスイッチを押し弾丸を発射する。しかし、天使の音波攻撃が弾丸を爆発させる。
「クソっ!」
『雑魚は片付けた。私が奴を引きつけるからその隙に撃って!』
「分かった。任せる」
◆
◆
「司令! 私に《超長距離支援銃》を!」
『分かった。すぐそちらに回す』
「ありがとうございます」
「司令! 上級が残る以上また復活しますよ!?」
「良いんだ。あいつらを信じろ」
「……了解。《超長距離支援銃》展開します」
◆
◆
バイアスの側の地面から《超長距離支援銃》の入った箱が出てくる。バイアスは《超長距離支援銃》を構える。
《超長距離支援銃》はソルジェーの通常装備より射程が長いため、すぐに天使をロックする。
アカリは弾丸を発射するが、タツミと同じく途中で弾丸が爆発する。
「タツミ!」
アカリの声でソルジェーが放った弾丸が天使に当たり天使は爆散する。
「反応消えました。状況終了です」
「ソルジェーの回収を最優先だ。装甲の修復を急げ」
「了解」
◆
◆
「ったく。俺の武器を気軽に使わないでほしいね」
ヘッドギアを外しコックピットから出てきたタツミが言う。
「しょうがないでしょ? 私がやらなかったらあんた死んでたかもよ?」
「お前に頼らなくても死んでないっての」
「はいはい」
二人は格納庫を出た。
◆
◆
「こりゃまた派手に壊れましたねぇ」
装甲がひび割れたソルジェーを見て作業員の一人が呟く。
「まぁ、相手が相手だからな。仕方ない」
「資源保ちますかねぇ」
「遠征の資源がある。それを使おう」
「そう言えばそうでしたね。忘れてました」
「さっ、作業に取り掛かるぞ」
「はい」
数人の作業員がソルジェーを囲んでいく。頭、胴体、足部分に分担して攻撃によって破損したソルジェーの装甲修復作業が行われていく。
「頭は大して損傷はないな……胴体を優先して修復するぞ」
『了解!』
こうしてソルジェー修復作業は六時間程で終了し、バイアスの修復作業も半分ほどの時間で終了した。
「整備班から報告です。バイアス・ソルジェー両機の修復作業が終了したと」
「早いな。砲台修復の状況は」
「現在、第三、第四砲台が八割がた修復完了。実用段階にギリギリ使えます。ですが、第一砲台は損傷が激しく修復にはもうしばらく時間がかかるとのことです」
「そうか。なら第二地上部隊を第一砲台に回してくれ」
「了解しました」
すると、指令室にダジェスが入ってくる。
「司令、報告が」
「で、何か分かったか」
「はい。原因は出力機の劣化でした。長時間の対天使用隠密装置の使用が原因と思われます」
「分かった。では化学班に分析を、余ってる作業員に修復を急がせろ」
「はっ!」
ダジェスは敬礼すると指令室を出ていく。
「お前たちもたまには休めよ」
「司令もですよ。ここ最近まともに寝てないですよね?」
「私は良いんだ」
「そうもいきませんよ。司令なんですから」
「じゃあお言葉に甘えて少し休むとするよ」
そう言うと、トーマスは指令室を出て自室へと向かう。
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