甘さ
あたしは、思っていたよりも甘かった。君が、何度言ってもペットボトルと燃えるごみを一緒に捨てたり、お風呂掃除を頼まれたことを忘れて寝てたり、あたしのアイスを勝手に食べたとしても怒れなかった。同棲する前は思ったことをちゃんと言えてると思ってたし、君のダメなところをしっかり注意できると思っていた。
今日も、生でシたがる君に「つけて」と言えなかった。午前三時、せっかくお風呂に入ったのに二人ともまた汗だくだ。お風呂入ったんだから、と言いつつも君に流されてしまうのもあたしの甘さだ。エアコンで無理やり冷やした部屋は二人の熱気でじめじめしている。全裸のまま君が窓を開けると、九月になったというのに入ってくる風はまだ夏のにおいがしていた。
「喉乾いたなー」
君が扇風機の前で子供みたいに声を震わす。いつの間にかパンツをはいている。Tシャツを着て麦茶を取ろうと冷蔵庫に向かうが、買ってくるのを忘れてしまったことを思い出した。それどころか飲み物が一切ない。
「飲み物ないんだけど、どうする?」
「まじかー」
いつの間にかTシャツを着た君がまた声を震わす。
「自販機行くかあ」
「そうだね」
冷蔵庫を閉じて服を着ようとすると、いつの間にかジャージを履いた君が財布を探している。
「またなくしたの?」
君はよく財布を無くすが、大概しょうもないところにある。トイレは?とよく置いている場所を挙げるが、なかったー、と言って部屋をうろうろしている。
「おかしいな……帰ってきたときはあったんだけど……あ」
ポケットに手を突っ込んだ君が、百円玉を二枚取り出した。
「ラッキー!」
子供みたいな笑顔で、嬉しそうに二百円を見せている君がすごく愛しかった。
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