「いや、味は良いのか。それはアリかもしれんな」 「「は!?」」
「つまらんな……」
街を出立して一週間。
山で昼食を食べ終えたアルゴは、あまりに代わり映えしない道中を思い返して、顔をしかめていた。
「何がつまんないんスか?www」
「商売のネタになりそうな目ぼしいモノが見当たらん」
干し肉を飲み下したイーサの問いかけに、アルゴは小さく答える。
アルゴたちは、隣国方向に向かって進んでいた。
すでに街を二つ超えている。
幾らか、
「魔物にも何体か会って倒したじゃないスかw」
「オデッセイとエルフィリアがな。その利益は二人のもので、しかも大した魔物じゃなかった。この山の魔物はどうなんだ?」
魔物狩りを生業とする二人に問いかけると、彼らは顔を見合わせる。
「って言われてもねー」
「平地よりは多少強ぇが、アルゴが満足するような稼ぎを得られそうなレアな魔物なんか、この辺にいるわけねーしな!!」
「だろうな」
一応、この辺りも山とはいえ街と街を繋ぐ街道の一角であり、強力な魔物が出てもそれはそれで困る。
「アルゴさん、刺激ないの嫌いスもんねwww」
「私は胃袋を満たす刺激が欲しいです……」
食事が物足りないらしいウルズは、涙目でお腹をさする。
「ご主人様たちのご尊顔で満たそうにも限界があります……!」
「顔を眺めて腹が満たされるのか? お前は」
「ある程度は! 眺め過ぎると溶けちゃいますけど!」
「便利かつ奇妙な体だな」
相変わらず意味の分からない少女である。
「オデッセイさんがヒゲを剃ってくれたらもう少し耐えれそうなのに、剃ってくれないし……」
「しつけぇな!! 剃らねーって言ってんだろ!!」
「ふぇ!? だだ、だって
どうやらウルズの見立てでは、オデッセイはヒゲを剃れば野性味溢れるのイケメンとやららしい。
しかし彼は、絶対に譲らなかった。
「不精だからヒゲ伸ばしてんじゃねーっつってんだろ!? こっちの方がオレサマにゃ似合ってんだよ!」
「ありえないですよぉー!! イケメンはイケたご尊顔をきちんとイモい私に提供するべきですー!!」
「整った顔が見たきゃ、自分のツラ眺めときゃ良いじゃないスかwww」
「イモの顔眺めて何が面白いんですかー!!」
「マジのイモを敵に回す発言www」
二人のやり取りに、ケラケラと手を叩いた超絶美貌のイーサが口を挟んで、やり取りが混沌としてきた。
「ねー、アルゴ。ボク、この子たちのやり取り聞いてるだけで楽しいけど」
「俺が求めている楽しみと少し違うな」
エルフィリアの言う通り、三人のお陰で道中退屈はしていない。
しかし、楽しいだけでは物足りない、ということがあるのだ。
飲用にするために、川から汲んだ水を鉄の器で煮立てていたのが沸騰したので、焚き火から上げようとしたところで、ウルズがよよよ、と地面に腕をついて泣き伏せる。
「うぅ……もうダメです……こうなったら、そこに生えてる美味しそうなキノコを……!」
「それ、毒キノコだよー」
真っ白でプリプリとした、木の根本に生えているキノコに目をつけたウルズに、エルフィリアがのんびりと伝える。
「美味しいけど、三日三晩下痢と吐き気と腹痛に悩まされるよー。二日酔いみたいな」
「食ったことがあるのか」
「ないけど。食べた人がそう言ってた」
「らしいぞ?」
「私ならきっと大丈夫です!」
「どんな自信だ」
と、言ったところで、アルゴは水を冷ますために地面に置いた水を見て、ふと思いついた。
「いや、味は良いのか。それはアリかもしれんな」
「「は!?」」
オデッセイとエルフィリアが声をハモらせるのに、アルゴは片頬を上げる。
「イーサ。お前が作ったあの塩辛過ぎて飲めたもんじゃない黄色のポーション、あれ、解毒ポーションだったよな?」
「また合わせるんスかwww ゲテモノ食いにも程があるスよwww」
言いながら、イーサは立ち上がってキノコを地面からむしり取り始める。
「って食うのかよ!?!?!?」
「なんで口で否定しながら動くの!?」
「え? 面白そうだからスよwww」
「食べるの!? 食べるの!?」
魔物狩り組のツッコミに、嬉々として動き出すイーサとウルズ。
「ポーションで煮込めば毒素が抜けるかもしれん。キノコでダシを取って水を足したら、味もちょうどいい
酒で薄めた、クソ辛い腕力増強ポーション……通称【バッカス・ドープ】は旨くなり効果もあった。
同じことが起こる可能性はある。
「上手くいったら、そのキノコダシ解毒ポーションも売り物になるな」
「ありえねぇ!!」
「うわー……勇気ってより無謀……頭おかしい……」
ドン引きしている二人を尻目に、予備の鉄の器を【カバン玉】から取り出したアルゴは、二人が摘みまくったキノコを放り込んで煮立て始めた。
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