2件目 鎌鼬(かまいたち)に服を破かれた人
さて本日は、朝イチで待ちに待った荷物が届きました。
段ボールを開けると、そこには老舗和菓子店のおすすめを詰め込まれている。
中身は芋羊羹の袋詰めと栗きんとんと……もろもろ和菓子ががどっさり入っている。
「これこれ、いや~、最高ですね!!」
……これが仕事の依頼じゃなければ。
あぁ、つらい。あぁしんどい!!
しかも出張しないといけないなんて……なんてしんどい!!
出張費がこれじゃなければお断りしたかった!!
届いてしまったから行くけれども!!
わたくしは黒いスーツに身を包み、大きな屋敷を訪れた。
そこは、某和菓子店の方々がいる木造のお屋敷で、古びている割にどっしりと構えた建物に感嘆の声が上がる。
しばらく玄関から庭を覗いていると、奥から疲れ顔の女性が顔を出した。
「よくぞお越しくださいました。こちらです。」
「あぁ、これはどうも。お邪魔します。」
しばらく後をついていくと、女性の足元に小さな娘さんが現れた。
背の高さからして……小学校に上がったかどうかという感じだろうか。
女性は娘さんを叱責した。
「ほら、遊んでいないでご挨拶しなさい。」
「うん、こんにちは!」
「おや、こんにちは。初めまして。」
「はじめまして!」
娘さんはじっとわたくしの目を見入ってから慌てたように女性の後ろに隠れた。
「ちょっと……失礼でしょ。」
「いいんですよ。わたくし、子供には避けられやすいんです。いつも通りの態度をとってもらえると安心感がありますよ。あ、こちら名刺です。娘さんにもお渡しください。」
「……お気遣いありがとうござ……。」
女性が名刺を受け取ろうとした瞬間、名刺が屏風を開くようにパラパラと崩れて長い形になった。
「……え?」
「あぁ、失礼いたしました!!そちらは、ご主人に渡すようでした。わたくしの家系図をくっつけてあるんです。よかったら見ます?」
「い、いえ、大丈夫です。主人は夜には戻ると思います。」
「そうですか。では、先に問題になっていたお部屋の確認をしてもよろしいでしょうか?」
女性はまた歩き出し、一番奥の襖の前で足を止めた。
「えぇ、この部屋なんですけど……裂き跡みたいなものがたくさん残っていて……開けるのも怖くて。」
「それはそれは、では開けてみてください。」
「へ?」
「……部屋の中を見たいので。」
「だからあの……襲い掛かられるかもしれないと考えると怖くて。」
「もしかしてわたくしが開けろということですか?でしたら開けますね。」
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