２つの地球は月をのぞむ 〜少女は浮いて少年はバズる〜

01:プロローグ

　2025年（ねん）4月（がつ）5日（か）。

　いきなり地球（ちきゅう）がもうひとつ増（ふ）えた。

　月（つき）を挟（はさ）んで反対側（はんたいがわ）に、いきなり地球（ちきゅう）がもうひとつ増（ふ）えた。

　そして、月（つき）を挟（はさ）んだふたつの地球（ちきゅう）は、月（つき）の覇権（はけん）をかけて争（あらそ）うことになる。

　月面戦争（げつめんせんそう）だ。

　月面戦争（げつめんせんそう）を行（おこな）うにあたり、両（りょう）、地球間（ちきゅうかん）では、様々（さまざま）な細（こま）かい協定（きょうてい）が結（むす）ばれた。

　全（すべ）てを挙（あ）げるとキリがないので、最（もっと）も重要（じゅうよう）、かつ最（もっと）も分（わ）かり易（やす）いルールをひとつだけ、取（と）り急（いそ）ぎ、ひとつだけ紹介（しょうかい）しておこう。

　〜　条約（じょうやく）１：月（つき）に生命（せいめい）を派遣（はけん）してはならない。　〜　

　ふたつの地球（ちきゅう）は、互（たが）いに、もう、十二分（じゅうにぶん）に知性（ちせい）とモラルが発達（はったつ）していたのだ。

　ふたつの地球（ちきゅう）は、互（たが）いに、無用（むよう）な殺戮（さつりく）行為（こうい）を、是（ぜ）が非（ひ）でも避（さ）けたかったのだ。

　そして、その条約（じょうやく）が結（むす）ばれた結果（けっか）、ある一方（いっぽう）の地球（ちきゅう）の命運（めいうん）は、たった一人（ひとり）の天才科学者（てんさいかがくしゃ）、そしてその娘（むすめ）のパイロット、そしてその親友（しんゆう）のオペレーターの少女（しょうじょ）のみに託（たく）されることになった。

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　オペレーションルームに、ふたりの少女（しょうじょ）がいた。

　ひとりの少女（しょうじょ）は、淡（あわ）い青（あお）い甘々（あまあま）のロリータ服（ふく）に身（み）を包（つつ）んだ少女（しょうじょ）だった。

　ロリータ少女（しょうじょ）は、もう一人（ひとり）の少女（しょうじょ）の事（こと）を見（み）つめていた。

　真剣（しんけん）に見（み）つめていた。

　あることをしながら、真剣（しんけん）に見（み）つめていた。

　もうひとりの少女（しょうじょ）は、目（め）を閉（と）じていた。目（め）を閉（と）じて集中（しゅうちゅう）していた。

　そして、目（め）をみはるほどの豊（ゆた）かなバストだった。

　豊（ゆた）かなバストの少女（しょうじょ）は、おもむろにタロットカードを３枚（まい）めくった。

　　〜　　９『隠者（いんじゃ）』　の逆位置（ぎゃくいち）　　〜

　　〜　　１『魔術師（まじゅつし）』の正位置（せいいち）　　〜

　　〜　１０『運命（うんめい）』　の逆位置（ぎゃくいち）　　〜

「うんうん、今日（きょう）もいっさい濁（にご）ってない。普通に絶好調（ぜっこうちょう）や！」

　タロットカードをめくった豊かなバストの少女（しょうじょ）は、のんびりとした、トーンの高（たか）い関西弁（かんさいべん）で、コロコロと笑（わら）いながらしゃべった。

「……うん」

　ロリータ少女（しょうじょ）は、頬（ほほ）をあからめて、口（くち）を押（お）さえながら「ぽつり」と返事（へんじ）をした。

　警報（けいほう）ブザーが鳴（な）り、ふたりの少女（しょうじょ）は持（も）ち場（ば）につく。

　月（つき）にあるロボットを、地球（ちきゅう）のオペレーションルームから、遠隔操作（えんかくそうさ）をするためだ。

　ロリータ少女（しょうじょ）は叫（さけ）んだ。

「『オルカ Mark-III』出撃（しゅつげき）します！」

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　月（つき）のハッチから、一体（いったい）のロボットが飛（と）び発（た）った。

　全高（ぜんこう）64メートル。

　16体（たい）のマシンによる、高速合体変形（こうそくがったいへんけい）を実現（じつげん）した、スーパーロボットだった。