「あぁ、今日もカッコいいなぁ…」

甘いドリンクを飲みながら、横で親友の優子がつぶやく。

私は優子の視線の先に焦点を合わせる。

目を向けた先にはガラス越しにまるでエフェクトでもかかったようにキラキラとしている、柔らかい髪で笑うとまさに周囲に蝶が舞うような雰囲気の若い男の子がいる。最近はよくこのカフェに来るようだ。

「うん、かっこいいよね…」

私も優子に倣って甘いドリンクを一口飲む。

周囲の女の子たちは色めき、その男の子をチラチラと見ている。

私も、彼に好意を寄せているうちの一人だ。

とても彼に釣り合うとは思えないけども、彼をこよなく愛している。


…せめて、同じ種族であればなぁ。

「せめて、あたしたちが人間だったらね」

まるで心を読んだように優子がそっと言う。

そして優子はその美しい2対の翅を悲しそうに下げた。

私はそんな優子と対照的に楽しげに翅をパタリと動かす。

「でも眺めることができるだけでも嬉しいよ」

ほら、と私は優子におすすめの蜜スポットを勧める。

優子は蜜を一口吸ってからそれもそうだね、と柔らかく笑った。

2頭の蝶はやがて蜜を吸い付くしパラパラと次の蜜を求めて楽しげに飛んでゆく。


人間の男の子はカフェからその2頭の蝶をガラス越しに眺めていた。


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