第5話実籾での佐々木孝

小笠原強師匠は佐々木孝師匠の事を『札幌の師匠』と読んでいた。


当時は奥さんの実家が実籾でも有数の資産家で、駅までの片側がおおよそ実家の借家でも有ったが、師匠が自宅を建てる前までは、奥さんの兄が経営しているスナックの二階を稽古場にしていたものだ。


そこにちょくちょく札幌の師匠がやってきて、麻雀の相手として近かった私は呼び出されたものだ。


ある時、私が国士無双でてんぱって、スーワン切りでリーチしたら、上座の札幌の師匠がイーワンで一発振り込み。


それ以来札幌の師匠が私に付けた綽名がイーワンの板さんだった。

天下の名人に綽名を付けて貰ったので非常に嬉しかったものである。


でも実籾に来ても稽古の無い日には、その辺の三味線を持って壁に向かって無心に打っていたし、さわりや鳴りが安定するまで打ち続けて居た。


しばらくすると、この三味線こんなに良い音色だったか?と思う位に変わったものだ。


札幌の師匠の口癖が『撥打ち3年』で有ったし、握手して小指の撥ダコを見ればその人のそこそこ技量が分かるであった。


私にはまだ無く3年程で何とか出来たものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る