リアルタイムアタックで世界を取るよっ!5

 さっそく大納言は袖の下から巻物を取り出して、のぞみの部屋の真ん中にある机にばさっと広げた。

 

「ではまずはこれを覚えるでおじゃる。ダンジョン99は、アイテムの値段を全て覚える事から始まると言っても過言では無いでおじゃるからな」


 巻物には墨汁で書かれた沢山の文字が、隙間がほとんど無い感じでずら~っと並んでる。

 字はかなり達筆な感じで、まるで書道の達人が書いたみたいだよ。

 

 とりあえずのぞみは、巻物の最初から最後までざっと目を通した。


「全部覚えたよ!」

「って、早っ!? おぬし、もしかしてマロを馬鹿にしてるのでおじゃるか? いくらなんでも、こんなに早く覚えられるわけ無いでおじゃる」

「え~。でも、のぞみちゃんと覚えたよ?」

「本当でおじゃるか?」

「ふっふっふ~。本当でおじゃるよぉ」


 なんとなくマネっ子してみた。

 大納言の言い方はな~んか真似したくなっちゃうんだよね~。


「では本当に覚えたかテストをするでおじゃ。敵をぶっ飛ばす、ぶっ飛ばしの杖の値段は?」

「780円!」

「むぅ、正解でおじゃ。――では次っ! 相手の動きを止めるカチコチの杖は?」

「1600円!!」

「ま、またしても正解でおじゃる!?」

「ふっふっふ~。こう見えて、のぞみは凄く物覚えがいいんだよ!」

「ま、まだまだでおじゃる!」


 その後ものぞみは正解し続けて――――――。


「3200円!」

「ぜ、全問正解でおじゃる!?」


 見事、全部正解したのだっ!


「どうやら記憶力は本物みたいでおじゃるな」

「だから言ってるじゃ~ん」


 のぞみはベッドの上に寝っ転がりながらごんすけと遊びながら答える。

 この感じなら余裕かもねぇ~。


「ふむ。時間が無いのでとりあえず基本だけ詰め込んで終わりにする予定だったでおじゃるが、――――これは本当にそこそこの記録が期待出来るかもしれないでおじゃるな」

「そこそこじゃなくて新記録を出すんだってばぁ~。だってそうしないと番組が終わっちゃうじゃん」

「そうでおじゃったな。では次に行くでおじゃる!」

「お~~~~!!!!」


 そんな訳でのぞみ達の特訓は次のフェイズに移行。

 

「では次はこれを判別するでおじゃる」


 のぞみ達の前にある机の上には、お皿の上に置かれたおにぎりが1個だけ置いてある。


「これはなんでおじゃ?」

「おにぎり!」

「では次。これは?」

 

 今度はさっきより一回り大きいおにぎりが置かれた。


「おっきいおにぎり!!」

「次はこれでおじゃ」


 今度もまたおにぎりだけど、さっきよりちょっとだけ小さい。

 と言う事は。


「おにぎ―――――」


 …………って、あれ?

 よく見たら最初に見たのより、もっとちっちゃい気がするよ。

 あっ!? もしかしてこれは、ひっかけ問題なのかも!?


「じゃなくて、ちっちゃいおにぎりっ!」

「――――ふむ。眼力も問題ないようでおじゃるな」

「ふっふっふ~。のぞみにひっかけ問題は通用しないよ!」


 得意げにダブルピースをしてみる。


「…………けど、これってなんかの役に立つの?」


 アイテムの値段を覚えるのが重要なのはわかるけど、おにぎりの大きさの判別とかゲームでどんな役に立つのか、のぞみにはさっぱりわからないよ。


「あのゲームには空腹ゲージがあるでおじゃろう?」

 

 のぞみはパッと頭の中でゲーム画面を思い出した。

 ライフゲージの近くに空腹ゲージがあって、なにか行動する度に空腹ゲージが減っていくシステムだった気がするよ。


「おにぎりの大きさで空腹ゲージの回復量が違うから、見ただけで回復量を把握する為でおじゃる」

「あ~。そうなんだ」

「小さいおにぎりから優先的に使っていく事でアイテム欄を節約する事も出来るので、大きさの把握もかなり必要なスキルでおじゃるよ」

「おっきい方から食べたらどうなるの? のぞみはおっきいおにぎりの方が美味しそうに見えるんだけど」

「間違って大きい方から食べてしまったら、小さいおにぎりだけでアイテム欄がパンパンになって他のアイテムが持てなくなってしまうでおじゃる」

「なるほど~」


 

 アイテム欄が空くって事は、その分のスペースに他のアイテムを置く事が出来るから、これもゲーム攻略の必須テクニックなわけって事かぁ~。

 これも忘れないようにしないといけないねっ。


「では、次。おにぎり判定、上級編でおじゃ」


 そう言って大納言は机の上にさっき使った大きさの違うおにぎりを3個横に並べた。

 

「この中から、中身がおかかのおにぎりを当てるでおじゃ」

「そんなの簡単じゃ~ん」

 

 のぞみは適当なおにぎりを1個掴んで、食べようとしたら――――。


「待つでおじゃる!」

 

 大納言に止められちゃった。


「食べずに判別するでおじゃ」

「…………え」


 パッと見だけだと大きさ以外の違いがわかんないよ。


「う~ん」


 透けて中が見えるかもって思ったけど、全くそんな事は無いみたい。


「こんなん無理じゃん!!!!」


 のぞみが机をドンと叩いたら、上に乗ってるおにぎりがちょこんとジャンプ。


「まあこればっかりは感覚で覚えるしか無いでおじゃるからな。マロくらいになれば、ほれこの通り――――」


 大納言は真ん中に置いてあるおにぎりを2つに割って中身を見せると、本当におかかが入ってた。

 

「ほんとだ!?」


 大納言は半分にしたおにぎりをそのまま口の中に放り込んで、もぐもぐ食べる。

 だけど、ここでのぞみは1つだけ疑問を感じたんだ。


「……てか、これって全部同じなんじゃないの?」

「だったら自分も食べてみればいいでおじゃるよ」

「わかったよ。えっとぉ――――――じゃあ、これっ!」


 のぞみは右の一番でっかいおにぎりを取ってかじってみると、ふっくらとしたご飯の向こう側にシャキシャキとした歯ごたえがある。

 ――――これは、もしかして。


「野菜おにぎりじゃん!?」

「にょほほほ。どうやら違ったみたいでおじゃるな」


 …………ううっ。

 のぞみとした事が大失敗しちゃったよ。

 

 野菜は苦手だけど、口をつけちゃったし食べるしか無いみたい……。


「これも何か役に立つの?」

「特別おにぎりは中身で効果が違うから、食べる前に効果が見分けられるようになればタイムの短縮につながるのでおじゃるよ」

「そうなんだ。ならもうちょっと頑張ってみるよ!」

「その調子でおじゃ」


 それからのぞみは、ひたすらにおにぎりを食べていたんだけど――――。


「も、もう限界だよ…………」


 ヤマ勘で当てる事は出来たけど、いくら食べても中身を完璧に当てるなんて事はのぞみにはちょっと難しいかも。


「これ以上は無理でおじゃるな。仕方ないから特別おにぎり対策は諦めるでおじゃ」

「ま、まだまだだよ!」

「食べすぎは体に良くないでおじゃ」

「でもぉ~」


 のぞみがおにぎりを眺めていると、ごんすけがやってきておにぎりを見ながら鳴き声をあげた。


「にゃわ~ん」

「あれ? ご飯無かった?」


 ごんすけはのぞみがご飯を食べてる時によく一緒にカリカリを食べるんだけど、カリカリを入れてるお皿が空になっちゃったのかもしれない。


「ごめん。すぐにあげるから、ちょっと待っててよ」


 のぞみはカリカリの入ってる袋を持ってこようとすると、ごんすけが急にテーブルに猫ジャンプで飛び乗って、おにぎりの匂いをくんくんと嗅ぎだしちゃった。


「あっ!? 駄目だよ。これは、ごんすけのご飯じゃないから」


 のぞみはごんすけを抱っこしてテーブルの下に降ろしたんだけど、またすぐにテーブルに向かってジャンプ!


「にゃん」


 そして、またさっきの同じおにぎりに向かって口元をぺろぺろさせながら、くんくんと匂いを嗅ぎ始めちゃった。


「だから駄目だってばぁ~」

「…………にゃん」


 もっかいテーブルから降ろすと、しゅんって感じの鳴き声をあげてから、のぞみの事を下から見上げてくる。


「そんなに食べたいの?」


 いつの間におにぎりが大好きになったんだろ?

 って思ってたんだけど、突然のぞみの頭にある答えた導き出された。


「これはもしかしてっ!?」


 のぞみはおにぎりの位置を入れ替えてから、ごんすけにテーブルの上に乗ってもらうと、入れ替えた位置のおにぎりの前に移動して「にゃおん」と鳴いた。


 そのおにぎりを手にとって中を確認すると、中にはかつお節おかかが入ってた。


「そういえば、ごんすけはかつお節も大好きだったっけ?」

「にゃん」


 ごんすけに手伝ってもらえば、特別おにぎりの判別もなんとかなるかも!


「ねえ。のぞみはごんすけと一緒にゲーム番組に出てもいい?」

「そうでおじゃるな。まあ大会レギュレーションに猫の手を借りては駄目とは書かれていないので、たぶん大丈夫でおじゃ」

「やった~。頑張ろね、ごんすけ!」

「にゃ~ん」


 てな感じで、この課題も無事にく~りあ~!!!!

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