木元清和
おれには五人の大切な『K』がいる。
あいつらと出会ったのは大学の――
って、うわあー、くすぐってえ! やっぱ無理! らしくなさすぎて、気持ちわりい。つーかとり肌立ってきた。
どうすんべ、これ。
いや、しかし、あのときはマジで死ぬかと思ったよな。実際けっこうヤバかったし。
まさか、学食で集団食中毒が起こるなんて思ってもみなかった。
死人が出なかったのがせめてもの救い――なんだろうなあ。当事者としては、自分のことに精一杯で、全体を見てどうこう考える余裕なんてこれっぽっちもなかったからなあ。
まあ、自分も宮藤たちも死なないでよかったとは思ったけどさ。
とにかく、当時はあっちもこっちも大騒ぎで、もうサークルどころじゃなかった。
でもって、事態が落ちついたころには、メンバーの半数近くが就活で忙しくなって……企画自体流れちまったんだよな。
つーか、編集要員としてサークルに在籍していたおれは、そもそも書き手じゃない。そりゃあ、おもしろそうな企画だったし、エッセイでもいいって話だったから、ちょっと書いてみようかなーとはいったような気もするけど。んで、今回もなんかふたつ返事でOKしちまったけど。ノリで、つい。
ああ、どうしよ。いや、どうしようもこうしようもねえんだけど。引き受けといて今さら断れねえし。書く。書くよ。書くけどさ。
もうほんと、くすぐってえし、恥ずかしいし、羞恥プレイもいいとこだ。
物書きってのはあれだな。みんなM。みんな絶対Mだ。
(つづく)
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