第15話

 取り敢えず予防接種の義務付けと同じ感じで力を俺に援助して居る奴には全員強化を行った。……まあ、それは本来なら前提では有った。……例えるならふるさと納税をしたのに直接の返礼品を配らず設備の充実に全振りした、様な物。別にその設備の拡充の恩恵をそれら納税してくれた人々が受けていない訳では無いから、不満がそこまで出なかったのがむしろ今回の話に成る原因に成ってしまった。……さて此処迄なら最低限の話だが、問題は此処からだ。即ち自分の援助者以外の奴に対する強化。時と場合に依っては敵と成る奴の強化なんてしたくは無いが、……此方が何らかの唾つけてないと浮動票分をかき集めて此方の強化と同じ理屈を敵に用意されそうだし、それの可能性を潰す意味である程度の恩は売った方が良いか。……さて、国の代表達と会議でもしましょうかね。恩を売ったと国単位で定義させてやる方が無難だろう……と。国際会議に行くまでは思っていたのだが。

「貴様が破格の報酬を得る前提としての義務をやる事で恩を売る事にしているのではない」

「それを受けたからと万全でも無い物に全依存なんてやれる状況では無いのでね」

「そもそも汝に全部任せた結果がこれだろう?」

 ……ぐふ。

「……後出しじゃんけん的な意味で万全を期すのは難しいのは確かですが、それでもやれるだけやりたい事すらやらせてくれないのですか」

「問題はそこでは無い。全てのウイルスのワクチンに成るべき立場の奴がその役目を果たせていないので、此方でやると言って居る。と言うか、未来予知かそれに準ずる未来を知る手段くらい出来ろ。後出しじゃんけん自体それが有れば全部潰せるだろう」

「……自分が出来もしない事をよくもまあ」

「限定的にはそうでもない。汝の力が有るが故の事は我々に出来ないにしても、汝の協力者達による、汝の力を押し上げている理屈だけなら汝でなくてもやれる」

「……誰をそれで押し上げる気ですか?」

「さてな、力なき正義の立場の奴にでもやらせるか」

「……そいつが増長し無い確証は有るのですか?」

「あくまでもその力は借り物の力でしか無い。得た力でスピーディーに頻繫に国民投票でもさせて民衆からの意見を常に大量に取り入れさせるか。それから外れたら退任だ」

「……民意がどの様な場合でも必ず正しい訳では無い」

「それはどの観点に置いて正しいか、にもよる話だが、最大多数の最大幸福が満たされれば政治としてはそれでいい」

「……それはそうだが、別に奴隷に成りたくて俺は今の立場を得た訳では無い」

「相応の対価は払われているだろう?」

 ……。

「……今回のミスを防ぐのが出来て居たとしたらその際に最終的に俺の方に残って居たリソースの余剰分なんて微々たる物だと思いますがね」

「だが、個人に払われる報酬としては、破格の物なのは変わらない」

「予算と報酬が一纏めに成って払われていなければ確かにそうなのでしょうけども」

「それはそう言う契約形態にした貴様が悪い」

「……報酬がもし破格だとしてもそれを使う暇がないタイプの場合も有るのだがね」

「汝に全体の力を集約させる以上、汝が全体をカバー出来る程に働かねば意味が無い」

「ですから、今回の話はそうでなくても大丈夫なようにしようという意味の強化ですから」

「それはある意味での職務怠慢では無いのか?」

「……世界の奴に自衛出来る様にしよう。と言う事がそんなに不満かよ?」

「全員同じだけ均等にバランス良く強化するだけでは他の世界からの問題ならともかく、世界の中の問題はほぼ据え置きだ。この世界自体の問題への何の解決策にも成っていない」

「……それでも他の世界からの介入を考えれば有効では有ります。……この世界の問題は別の方法でどうにかします。だからやらせろ」

「怒るな、怒るな。そもそもこうして会議して居る時点で我々はある程度尊重されて居るのは解る。何故なら汝は一方的にどうこうするかを押し付けても良い立場なはずだしな」

「……ならこの話の意味は」

「無意味な政策に全振りされても困ると言うだけの事」

「……これからも精々努力させて貰いますよ。じゃあ取り敢えず全体の強化はやると言う事で良いですね?」

「ああ、構わない。但し希望者だけにやらせる形でやるなら、だ」

「解りました。そう言う事で行きます」

 そして話は決まって、いわゆるワクチン接種的な物を全体に行った。そしてそのついでに色々と調べると、白菊の偽者を妊娠させては出産させて、を、繰り返している奴が居ると調べが付いたので取り敢えず殺すか。そいつの神格はセベク名の意味は妊娠するかしないかを決める者。それが転じて他者を強制妊娠能力。白菊の偽者を召喚しては妊娠させて産ませて、を、繰り返している様だ……元ネタだと太陽神ラーに統合された神格だし、ラーには気を付けておこうかね……。まあ、良くないが良い、うーん。よし、他人の強制妊娠への罰?強制女体化させて虫の子供でも延々と産ませようかね。そして刑を執行して取り敢えずやった回数分の妊娠と出産をさせた上で再犯潰しの為に殺した。まあ、やりすぎは恐怖政治とか言われるからアレだが、これはしょうがない。これで恐怖政治とか言われるなら構う物か。現状はこんなもので良いかな……。



 全体を強化した事について一言で言えば、全員の脳死的な強化は一部の奴のバランス崩壊を招く訳だが、前提条件を変えるので有効な物が変わる。徐々に技術インフレするのでなく今回の様に力を全員に与えてアッパー調整を行うと、科学技術側もアッパー調整し無いと不味いが……ね。まあ、これで言う、効かないと言う範囲は本来なら広ければ広いほど良い。何なら核だろうが何だろうが素のスペックが皆高い為に、通常科学の通常兵器は効かないくらいで良い。そう言うのが大前提と言う事にしたいくらいだ。まあ、もしそうするならばそう言うのを武器に戦う奴等が環境に合わせた武器を開発するまでアレな事に成る訳なのだが、そう言うバランス崩壊を起こす奴等に別枠で力を与えるくらいはしないとそいつらは只の肉弾戦しか出来ない奴に成り、下手すれば只の保護対象化しかねない。だが、別枠で力を与えると言うのは与えるスペック量としては公平ではない。但し、あくまでも調整として全体にスペックを与えた事で死にスペックに成った部分の補填でしか無い訳だから、最終的な使える物の増え具合では同じな訳だが。さて、最低限の皆の強化は終わった。何やろうかね……そう言えばケールハイト辺りに会いに行くか。そしてケールハイトに会いに行くと。

「水霧……正直な話貴方が重役から抜けた私が代表やっているエウミア連合国の運営は貴方が居た時より大変に成って居ます。私の力は表沙汰出来ないですから、武力的な意味での象徴が居ないですし」

「……ケールハイト、苦労を掛けるな……」

「そう思うならまた手伝いに来て貰っても良いのですが?」

「……俺は俺でやる事が有るから」

「一応、水霧の言うそれは私の為にも成って居ますから良いですけど、……例の私との子供も居る件の話には私も呼んでくれたら良かったのですが」

「流石に国の代表をホイホイと秘密裏な話に呼べないだろう。俺が今の立場に成る前のエウミア連合国に所属して居る時ならともかくとして」

「それを言うなら今の会って居る事もアレだとは思いますが、まあ、今はやる事がひと段落した所でしょうしね」

「なんて言うか、蚊帳の外にして、ごめん」

「……解って居るならエウミア連合国の運営もまた手伝いなさい。良いですね?」

「そうだな。何すれば良い?今ならすぐさまやらないといけない事も無いし問題無いが」

「いえ、分身を常設して貰って、その事を公式に明言して貰えばそれだけで十分だとは思いますが」

「いや、それだけだと国の大使館と似たような物だろ?」

「エウミア連合国にある程度常設でキャパを割いて居るという事実が有れば、威光を借りるには十分です」

「……うーん、ケールハイトの能力を表沙汰出来ないのがね……多分リソース的な問題を除けば十分ケールハイトは今の俺にも対抗出来る余地は有るだろうし」

「水霧に比べれば手法的な意味で制限は有りますので、スペックのみでの対決なら普通に負けるとは思いますけど」

「……なんかさあ……強い力を得た(格上や同格はそれなりに居る)……普通なら無双とか出来る物じゃ無いのかね」

「そもそも水霧は創造主としての力を除けは相手に何を出されようが問答無用で勝てるタイプの能力で無い以上、実際に対抗出来て居るかどうかは別として、対抗される事自体は諦めるべきだと思います」

「まあ、それはそうなのだが、幾ら力を得た所でそう言うのが湧いてきそうでな」

「クトゥルフの話ですね?神話の顔役がまともに干渉して来る段階に来て居る時点で明確な根拠が有る形での対抗馬に成り得る奴もかなり減って来た頃合いだとは思うのですが」

「だが例えば創造主系統の奴と戦うなら経験不足的な意味で明確にまだ力が足りないし」

「水霧は最強でないと気が済まないのですか?」

「……最低限他の悪意から身を守るくらいの力は欲しい。それにそもそも前の件での前提と成るシステムの作成者ともまだ本格的な話が付いて無いし」

「何も根拠の無い妄言が事実だと扱えるならばどんな事でも事実足り得ます。それが有りなら世界を幾つも丸ごと壊す様な力を持つ奴が只の何の力も持たない雑魚にだってやられる事に成りますし」

「根拠の無い俺が勝った云々など相手にするだけ無駄。それを有りにしたら真逆の結果の主張もダブルスタンダード抜きでは何も否定出来なくなる、か……本当にアレだな……」

「単純な話として水霧は召喚システムで女性ばかり創りますが、女性と言う事に対するメタをぶつけられたらどうするつもりなのですか」

「それでもサタナキア相手にはそれでも何とか成ったし、白菊はその力を跳ね返して居た」

「……サタナキアと言うと……ああ、エウミア連合国が出来る前の話ですか。それについてなのですが、サキュバスはインキュバスと表裏一体と言う説が有ります。力で身体を作る関係上、男か女の身体だけを作ると言う事に拘る必要が無い故に、と私は解釈していますが、彼女がその件で問題無かったのは女性と言うよりも両性枠、又は性別不明枠扱いだったからでは無いでしょうか?」

「……うわ……マジかぁ……一応、その時は魅了の力で他の奴のそれを崩せたのだけどな」

「そう言う理由も並列して有るにしても、サキュバスがインキュバスと表裏一体な説が有るのも事実らしいです」

「……いや、要は能力で身体を創れるからそれで男性の身体も創れると言うだけで、別に白菊に男性的な精神が有る訳じゃ無いはず」

「……そもそもサキュバスの姿で男性から精液を集めてからインキュバスに成って、精液を自分の物に造り替えてから、それを使い女性を犯して孕ませて繫殖する……と言う説が有る種族ですが」

「えげつないな」

「ちなみにこの設定故に基本的に悪魔は子供を作れないと言う定説が有る状況でも子供を作れると言う例外種族に成りました。……貴方が召喚した人達と子供を造る際にお世話に成った内容なはずですが、恩恵を受けて置いて知らないのですか?」

「……一応は知っては居たと思う。……内容が内容だから目をそらして居ただけで」

「……そうですか……そう言えば、クトゥルフ神話関連の神格や町とかが実際に居るなり在るなりする前提なら、しないとは思いますが、とにかく猫は害さないでくださいね。クトゥルフ神話に出る町に公式としてそう言うルールが有る所が有るので、それをするのはクトゥルフ神話関連の方々に喧嘩を売る様な物ですから」

「……そうだな。解った。頭に入れとくよ……それの範疇として猫の獣人とかを攻撃するのがアウトじゃない事を祈る。犯人側にそう言う奴が出た時に攻撃したらクトゥルフ神話関連の所に喧嘩売る事に成りますなんて成ってもアレだし」

「その場合どう言う判定に成るかは解りませんが、クトゥルフ神話には一応ギリシャ神話系統の神格も出るので、バステトの神格に喧嘩を売る形に成るかも知れませんね」

「……該当生物の神に喧嘩を売るとしても動物を食する事は生きる上では必要だが」

「猫が食用の物だとでも?」

「そう言う事が言いたいのではなくて、生存する上で必要な物なら特に喧嘩を売るなんて事は無いのでは無いか?と言うか何というか、必要悪って言うだろ?」

「そうですね。実際、動物愛護の主張を制限なく言うのはアレですし、何なら動物を害さないベジタリアンこそ正義みたいな思想はアレです。その延長で薬の開発にモルモットを使うのを辞めろと言うなら、代わりに貴方が未完成の薬を飲みまくる役目をやりますか?と言う話に成りますし」

「自殺目的以外で何も能力無しじゃそんなのやりたくは無いな……」

「だから代わりにモルモットにさせています。……此処の押し付け先のモルモットを人間に置き換えたのが神の視点で無ければ良いですけど……」

「……うわぁ……そうならないようにしないとね……よし、取り敢えず話は此処で切り上げる事にして、分身でも配置してくるよ」

「では配置して欲しい所を地図で示しますので、地図でも見ましょうか」

 そして地図に記されたポイントに分身をある程度の数を配置して、少しケールハイトと遊んでからエウミア連合国から拠点へと帰った。




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