第3話

『それで此方に意見を求めに来た、と。此方が全部決めるのでは汝がやる意味が無いのだが』

「……少しくらいまともなチュートリアルをしてくれたって良いじゃ無いですか……それが無い故に検証迄全部自分側でやらなくちゃ行けなく成っていますし」

『それくらいは苦労しろ。ヒントと言うか、気付いてない様だから言わせて貰えば、召喚システムによって一つ、そこの彼女との融合で更に一つ、この世界の仕組みによって更に更にもう一つ。現状でも既に汝は持って居る。その内一つしか汝は碌に使えて居ないがね』

「……この世界で得たものと言えばヘカトンケイルの神格と創造主としての力ですが、後二つ持って居る?」

「……ヴィシュヌ様、それはつまり水霧が力を持つ事に気付いて居ないと言う事かしら」

『まだ現状では碌に機能していないが、汝の主張的な意味で持つとやばい物も含まれる』

「……俺の主張的に持って居ると不味い物、ですか」

『今迄を振り返れば割と予想は付くと思われるが、ま、教えてはやらん』

「……いや、教えてくださいよ。それを持つのは俺の主張が崩れる的な意味で不味い類いの奴ならシャレに成りませんので」

『詳細は知らない方が言い訳も付くが』

「……ダブルスタンダードなのを放置するのはどうかと思うのですが?」

『仮に全能を目指すなら自分の主義主張と反する能力を持たない訳には行かないが?』

「……だからって……」

『それはともかく、この話の前提として、主神クラスの奴以上の奴は考慮する必要は無い』

「……なぜですか?」

『主神クラス以上の奴が来るような検案がもし発生するならそもそも現状の汝が何を造ろうが無意味だからだ』

「……其処迄言いますか……」

『他所の定義はともかくとして、此処で言う主神クラス以上の奴は他に何を造られようが前提から崩せる輩共の事を指すからだ』

「……創造より破壊の方が簡単だと言うのは解りますが、それだと身も蓋も有りませんが」

『汝がどの様なルールや摂理の世界を造ろうが、自前でルールや摂理を持つ為に世界のルールや摂理に従わずともその世界に在れる』

「……それじゃあ只の無法者だ」

『世界の仕組みとして創造主には絶対に勝てないと言うルールや摂理を創れば自分の世界の全員に勝てるとしても?』

「あくまでもそう言う奴等はルールや摂理を創る側で有って従う側では無いだけ、ですか」

『まあ、そう言う事だ。他人の創作のキャラなんて自分の創作の中ではどうとでも出来るだろ?平たく言えばそう言う奴等はそれを世界単位でやって居るだけの話』

「……それって要するにアンチ・ヘイトなのでは?」

『あくまでも全部自分で設定した別人だよ。だから本来勝てない敵にも勝てたとしてしまえる。それを本人カウントで考え、まともに取り合うつもりでいたら有名処は無尽蔵に負けた事に誰でもされてしまうだろう。だって全部自分で条件なり何なりを決めてしまえるのだからね。何の理屈も無いそれにまともに付き合うのは取り合うだけ無駄だよ』

「……例えばコスプレでの疑似寝取りビデオレターを見せられたのと何が違うのか」

『他人の勝手に決めたそれはあくまでも別人。その考えじゃ無いと色々とキツイだろう』

「……要するに不意討ちで精神的なグロ画像を見せられても怒るな、笑って流せと?」

『あくまでもそれが只の虚構ならば、そうするべきだ。有名作品のキャラなんてどれだけそれをされて居ると思う?有名税なんて言葉で納得したくは無いが、散々既にされて居る事であろうし、国単位でやらない様に規制を掛けるのもやるには監視社会が前提だ。それをやるには問題が有り過ぎる』

「だからそれらを笑って流せと?」

『それで怒って全部潰そうとか思い、出来る環境って物が成立するならそれは楽園では無くディストピアだと言って居るだけだ。どうせ創るなら楽園を創りたいだろ?』

「……自分の使えない楽園なんて創ってもしょうがないけど、ディストピアを創るのではメタ創作的には打倒される側だしな……」

『早い話、一万回戦ってその内一万回勝てる内容でも負ける。内容を他が勝つ前提にして勝手に忖度盛りまくりで此方の意思関係無しに考えるなら当たり前だ。そんなの気にしていたら禿げるぞ……って……いや、水霧は水の身体なのだし、身体は自由に用意出来るから関係無いか』

「……俺は禿げては無いですよ。まあ、見た目を変えられるので関係無いですけど。それはともかく、心労が余計に来るのは解りますが……あー、ちゃんとした理屈が有る物はともかく、確かに明確な理屈も何も無くても成立させられる物に対して、厳正な物かどうかもそもそも判断しようが無い内容の奴を真面目に受け取るのはアレか……と、それはともかく、どうせ後の二つは水系統の内のどれかですよね?それで良い能力だけしか無い奴を除いて考えれば良い……まあ、色々とそれでも有るのですけど」

『……はぁ……一応は言って置くが、対象は両方とも主神クラスの奴じゃないぞ』

「……なら自分の一側面として災害を起こす事も有る系、ですか?それならそれをやるだけの力が有ります……で、済むのですが……」

『どうだろう?だがこれくらいなら言っても良いか。少なくとも純粋な邪神枠の奴では無いので安心するように』

「……つまり、良い事も悪い事も両方やる系か……うん。だいぶ絞り込めそうですね。後は自分で考えてみます」

 ……まあ、純粋な邪神枠のじゃ無くて一安心かな。色々と試行錯誤してみますかね……。そしてある程度更に話した後に調べてみる事にする。どうせアーバーンと融合した故の得た云々は水霊関連だろうし……水霊系を調べると美女扱いされる奴が多い。他を溺死させる奴も多い。うーん。男の水霊も居ない訳では無いが、溺死程度でわざわざ取沙汰して文句言われるほどか?純粋な邪神枠の奴は考える必要は無いとして……。俺の主義主張と反する物を持つ水霊と言う括りで調べれば解るか?例えば他の奴の尊厳を破壊する様な能力持ち……事故を意図的に起こさせる系も居るな。セイレーンとかローレライとか。……あー、ローレライだと魅了能力も有り得るのか。設定上美女扱いの奴が多く見られるし、設定として魅了能力が有っても可笑しく無さそう。セイレーンだと遭難や難破。現物を敵で見たことが有るからセイレーンは除外で良いはず。そうじゃないとわざわざヴィシュヌ様が隠す意味無いし。……魅了能力かそれに準ずる物の素質が有ってもそりゃあ可笑しくなさそうだな。付属する別の要素が分かればそちらは使えそうなのだが……。色々な事を試すとするか。そしてある程度の事を試して思う事は……。んー?同じ威力だと想定された物のダメージのずれが有るな。もう少し調べよう。まず前提として、俺の身体は水で構成されている様に能力でして居る。そして水系統の攻撃を受ける際に受けた水とそのエネルギーをそのまま体の外に放つ事で実質の水の攻撃の無力化が出来る。んー、当たり判定を無くす能力の劣化版と言うか、自分の身体が水なのを利用して水系統の攻撃をそのまま通り過ぎさせて居ると言うべきか。嵐とか渦潮とかの渦中環境でも使えれば割と使えそうな気がする。少し鍛錬してみますか。そして暫くの間鍛錬して、今日の所は寝る事にして、夢空間の白菊の所に会いに行く事にする。傍目には普通に寝ただけの様にしか見えんはずだしね。



 そして夢空間の中に移動し、白菊の所へと行くと、……子供らが居ないな。如何やら他の場所に遊びに行っている様だ。そして白菊が居たので白菊へと話し掛ける。

「白菊、何と言うか、すまん。今日仕方なくだけど白菊の偽者をぶっ殺した」

「……。水霧、開口一番それですか?アーバーンさんからある程度先に聞いていますが、他に言う事は無いか?とか、ばれない程度に私かどうかを確認する事は出来ましたよね?」

「……。何と言うか本当にごめんなさい」

「偽者が今後も来る可能性を考えるなら何か取り決めをしておきたいのですが、良いですよね?」

「そうだな。まず、緊急時以外は基本的に彼方に行かない様にする。その上で緊急時や無理矢理来させられた場合の取り決めを行う。完全に操られて自由に行動出来ない場合は追加の何かで判断する。此処迄は良いとして、追加の取り決めは……でどうだろう?」

 尚此処の部分は広くに開示しては意味が無いので伏せさせて貰う。

「大体は解りました。何と言うか、これから更に大変そうですね」

「まあ、ただでさえ恨みや妬みは買う事をやって居る訳だし、本人に敵わないから周りの奴を狙うなんて三下のやる事だが、そうされると面倒なのは確かだしな」

「その結果として子供らが産まれた事自体を秘匿情報とする。それは良いのですが、……何が有ろうが秘匿したままで子供達に手を出さないで下さいね。昔貴方がシステムに介入してまで世界に止めさせた事を自分がやって居るなんて成るのは笑えませんから」

「……まあ、そうなるわななんかヴィシュヌ様が俺にまだ使えてない力が有るとか言って来たから調べたらなんか制御で水系統の攻撃に対する攻撃の受け流しが出来るのに気付いたのだが……なんか使い方次第でまだなんか出来そうでは有るし、なんか無いかな」

「終端速度的な意味で風に対して水は弱いのを、それで如何にか出来ませんか?」

「ああ、雨が痛くない理由の奴ね。そこ辺りも考えてみるか……身体が全部水なのを利用して、体内を水車にする、とか?」

「つまり、水の体の表面上を風で動くベルトコンベア的な物にする、と言う事ですか?」

「そうそれ。上手く行けば風の影響の緩和ないし無視が出来そう」

「……なんか今の話だけで上手く行けば水と風の攻撃無効が可能ですよね。で、水霊関連。今迄の話とすり合わせると伏せられた二つの内の一つは嵐環境で救助をしてくれる水の精のヴォジャノーイ辺りが怪しそうですね」

「ヴォジャノーイ、か、情報見させてくれないか?」

「これです。どうぞ」

 そして参考資料を見せて貰うと……。

「うわ……多分これだ。ヴィシュヌ様に問題視された奴、条件付きとは言え、相手の奴隷化能力を持ってやがる……って気付けよ、俺ぇ……」

「いや、それでどうする気ですか?」

「仕様を確認して、自分では簡単に解除出来るようなら耐性を付けるための道具にする」

「……つまり、私達にその力を一時的には使うと言う事ですか?」

「……人聞きが悪いな。ワクチン接種と同じだよ。散々弱体化させたウイルスを注射して対象者に耐性を付けさせるのをやりたいって言って居るだけだが」

「それを解く前に心変わりし無い保証も無いのにそれを受ける人は身内以外に居ますか?」

「ま、そもそも論として出来るかも知れないと言うだけの段階だ……まあ、仮に正しいならその奴隷化の条件的にアーバーンは、……まあ、うん」

「……解りました。仕様を確認次第私にもやってください」

「……いやまだ出来るかも解ってないからね?ヴォジャノーイの奴隷化の条件が軽く調べた通りなら、既にアーバーンはアレだと言うだけで」

「……正直な話もう貴方は前にその力を行使して居ると思居ます。具体的には世界並列顕現関連の騒動の時の敵に出された疑似水神をそのまま喰らい切った件で。あの後その疑似水神関連の事が起きた的な話は一切聞いていませんし」

「……そう言えばそうだが、そう言う事か?」

「恐らくは」

「……それにしてはアーバーンは特に何も無いし、ある程度以上強制的に融合する事が条件って事だろうか?……合意じゃ機能しない能力とか業が深いが」

「それはする際の目的とする結果が違い過ぎますし、一概には言えないかと」

「目的一つで効果が変わるとか一見すると万能に見えるが、逆に言えばそれはする際の目的に準ずる仕様に不備が有るとやばい事に成りかねないタイプの奴だし、事故が起きる前提じゃ無いとテンプレ作らないと脳死じゃ碌に使えないのでは?」

「自由に使えるタイプの奴でなくて済んだと言うべきでは?」

「……いや、やる為の細かい手法制限が有れば味方には敵に俺が操られる展開に成ってもそれを警戒して置けって言うだけで対策は済むよ。……でもこれ割と条件緩いし……」

「そもそもアーバーンさんにそれ系が効くなら能力上既に他に散々されてそうですが」

「……そう言われてみれば確かにそうだな。最大範囲の水の化身だし。そう言う能力を余波でそう言う能力を普通に既に受けた事くらいありそうでは有る。そしたら融合している俺だって不味いが、そう言うのは基本的に無い訳でヴィシュヌ様だってどこにでも存在し、全ての中に存在する者だから、何なら世界の中で今迄使われた事の有る全ての魔法や異能とか名前は何でも良いが、それが正しいならば、そう言う特殊な物全てを前提として受けた事が有るはずだ。それでも平然と生存しているがね」

「それはあくまでも上位互換の存在にそう成っても問題無い例が有ると言うだけですけど」

「……いや、それがアーバーンにも当てはまるので無いと何なら俺も危ないが」

「完全にでは無くても例えば冷却である程度凍らされる事とかが有った気もしますが」

「……別に完全不変能力持ちじゃ無いのだし少しくらいなら効くだろう。それは。それでも死なないと言う事が重要なので有ってさ」

「化身としての規模的な意味で通常規模の大抵の攻撃は途轍もなくでかい焼け石に通常の水滴一粒を垂らされる様な物でしか無いから効かないだけ……と言う理屈だと規模を補われたらアレですが」

「……少しは効くや効かないは、それで死ぬや死なないとはまた別の話だと言うだけだろ。それを掘り下げるのはアレだからこの話は終わりだが」

「それはともかく、奴隷化能力をそれに対するワクチンを摂種する為に使う……ですよね」

「それがどうした?」

「確認の為に言いますが、この夢空間は夢の主の意思通りに全てが歪ませられます」

「ああ、そうだな。寝て見る夢の中でやりたい放題やる奴ならこれの意味は解るはずだが、それがどうした?」

「どうせ夢は夢です。ですが、此処の場合は能力空間な為、ある種の現実でもあります」

「それは只の夢でも同じ事だ。その夢を見て感じるアレコレって奴は現実なのだから」

「それで疑似ワクチン接種をしまくりませんか?」

「……それは、それは……まあ、夢空間内だから何でも用意出来るわな。だが現実でそれの意味は有るのか?」

「この夢空間は現実でも有るのでどうにかします。結果でヤバく成りそうなら、それを無力化しますが」

「……良い話に聞こえるが、止めとくよ。危険に成ったら取り下げられるなら要するにそれで得られる耐性はそれの前提と成る夢の主導権を取られたら無力化する類いの耐性でしか無いだろうし。格上を相手に弱体化ギミックなんてシステム関連の根本的な問題以外に追加で抱えて堪るか」

「逆に言えばそうされなければ耐性全部盛りが可能ですが」

「メタ視点的には崩される前提だよ、そんな物。耐性全部盛りと言えば聞こえは良いが、それで得る耐性は一つの能力に前提を全依存している。それで得られる物を根拠に相手を倒せる腹で挑んでも、一つの能力を攻略されたら総崩れ的な事に成りかねない」

「それを問題視するなら万能系能力の全否定ですけど」

「そうじゃなくて、この話の場合、全部のそれで得て居る物が一つの力に前提を全部依存して居るから、それで幾ら盛ろうが相手からすれば盛った物を攻略する為に攻略すべき能力は一つだけだって事に問題が有る。メタ視点的にはアレだろう。前提と成る力が他に絶対負けない前提なら良いけどね」

「それでも無いよりかは」

「うん。確かにそれでも無いよりかは有った方が良いともさ。でも今はあくまでも白菊は行方不明者扱いだから、その理屈を常時使用していたら流石に白菊の所在が他にばれる」

「じゃあ色々と一時的に試すだけ試すのが良いですね」

「そうだな。じゃあ色々と頼む」

 そして色々と実験を繰り返してから夢空間内で本当に寝た。

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