手記

 積み重ねた小さな雪の結晶が、私の漏れでる音も、押し殺す想いも、吸い込んでくれる。


 春が来れば、私の秘めたる志望しぼうと共に溶け、土へと返すだろう。


 身を縮める寒さも、肌を刺す風も、今の私には心地良く感じる。


 貴女の遺した偉大なる叡智えいちと、私の命数の大半を使い、逢いに行きます。


 燦然さんぜんたる冀望きぼうを叶える為に。真綿で首を絞めるこの世界を終わらせる為に。


 千の冬と万の月。貴方の明達な脳と洞観どうかんな瞳を使い、時を遡ることをどうかお許し下さい。


        ヒエムス・ルナ・ノクス

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