第5話 苦手な友人男性との帰路
2020年の10月頃、私と彼は郵便局から専門学校に向かって帰っていた。距離は500mほどだと思う。郵便局に用があったのは私だけだが、彼は「暇だから」と言って私に付いてきていた。
当時、私とこの友人は9か月くらいの仲だった。気が付いたら話すようになっていた。ただ、この友人との相性が全く合わないのだ。例えば、私は普段、冗談を言うのだが、その友人には全く通じない。(まあ、それは仕方ないか)面接練習の相手をしてアドバイスをしても「それはお前の主観だ」などど言って全く聞いてくれない。私以外の人間も彼の言動にはうんざりしていた。
そんな彼と二人きりで郵便局からの帰路についていたのだが、彼が突拍子もなく「母親は好きか」と聞いてきた。私は少々面喰った後、「うん」と答えた。母親としてだ。マザコンではない。すると彼は「俺も」と安心したように答えた。おそらくこれも母親としてだと思う。そんな会話を交わしつつ学校に着き、昼食を済ませた。
夜になり、風呂に入りながら一日を振り返っていると、その友人との会話を思い出した。そこで私はあることに気が付いた。私と彼は父親がいないのだ。もしかすると彼は私に確認したかったのかもしれない。母親を好きと思っていいのか、と。それを「父親のいない私」という同じ境遇の人間に尋ねたかったのかもしれない。そう考えた。彼に確認するのは嫌だったので真相は今もわからないのだが……
そんな会話を交わした仲でも私は彼が苦手だ。殴りたくなる時もある。ただ、どこか憎めない。なぜだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます