ミネラル
莉子
ずっとずっと、一緒に居たい
ぼくは、あったかくてぬくぬくとしたおへやでねていた
そうするときゅうにね、ひとすじのまぶしい光がさしこんだんだ
(……んっ……おこさないでよー)
ちょっとだけきぶんが落ちちゃって、外からはなんだかザワザワと音がするんだ
(……えっ! うわっ!)
ぼくのからだがういた
ねぼけているのかな? って思ったけど、ちがったみたい
(ははっ! くすぐったいよ!)
やわらかいものが、からだのすみずみをすべっていく
そして、ていねいにていねいにどこかへ入れられた
まっくらだ
(ぼくは……どこへ……?)
ちょっと不安だった
でもほんとにちょっとだけで、ふしぎとこわくはなかったよ
それは……ぼくをやさしくやさしく、さわってくれていたからかもしれないね
……あれからどれくらいたったかな?
あのままずっと暗くて、前も後ろも右も左もぜんぜんわからなかった
でもきゅうにね、またまぶしい光が入ってきたんだ
おこされたときよりもっと明るくて、思わずびっくりしてしまったよ
(ここは……?)
せかいがキラキラして見えたんだ
このときぼくの中で、あたらしいみちへのドアがひらく音が聞こえた気がしたんだ
なんでかな……心がウキウキ、ワクワクとおどるようだったんだ
またぼくのからだがういて、見えているけしきがぐるぐると目がまわるようにかわった
でも、それもすぐにおわった
(なんてきれい……だけど……)
なにかのむこうは、色とりどりで大きさも見た目もぜんぶちがって、とてもとてもみとれるほどきれいだった
(でも、なんだろうな……ちょっとかなしい……)
なにもないんだけどね、そう思ってしまったんだ
そしてぼくはこのとき、はじめてじぶんのすがたを見たんだ
(ぼくもみんなとおなじ……!)
ちっちゃくて、白かった
ぼくは、みんなのせかいへとびこんだ
そして、まん中のはしのあたりにおかれたんだ
あんまり目立たないところのね
でもそれでよかったんだ
だって、ぼくははずかしがりやだったから
(……こ、こんにちは!)
(ふふっ、これからよろしくね)
思いきってとなりに声をかけてみた
すると、とてもすきとおるようなきれいな声でことばをかえしてくれたんだ
心があったかくなったよ
(みんなとってもきれいですね! ぼくもおなじだなんてしりませんでした!)
(ふふっ……わたしもそうよ。ここにくるまでわからなかったは)
ぼくのはなしをたくさん聞いてくれて、わからないことをいろいろおしえてくれた
ここにいるみんなは、ぼくもふくめておなじ
どこからきたのかは、わからないみたい
たまにここからでていったりすることもあるみたいで、ずぅーーっとこのままもふつうにあるらしい
(……だからなんだね……、みんながちょっとさみしそうなのは)
(……そうね……。でも、たのしいときもあるのよ! あとでわかるは)
いままでとちがって、みえているものがすごくせわしない
あっちからこっちへうつりかわって、ちょっとつかれちゃうな
(……きみ、もうそろそろよ。たのしいじかんは)
(え……?)
パチッといっしゅんにして、くらやみになった
そのとたん、上からも下からもにぎやかな声がドッとわきおこった
(え、これはなに?!)
(こうなるとね、さわがしくしてももんだいないのよ。ふだんからあんまりしゃべったりできないからね……みんな思い思いにはなしたいことがあるのよ。わたしはこのじかんがいつもしあわせなの)
それは、はじめてのたいけんだった
ぼくもみんなとたのしむのは、すごくすごくしあわせだった
どれくらいかな……みんなと心をかよわせるようになって
やさしくてきれいだったあのこは、でていってしまった……
あのこはすごくよろこんでいたみたいだけど、ぼくはすごくさみしかった
わらっておくりだしてあげたけどね
それからいつの日やら、ぼくにもうんめいがまわってきたみたいなんだ
(み、見られてる……ぼくのことをずっと……)
いつもはそんなことないのに、きょうはちがった
よくわからないけど、じゅんすいでむくなきれいな心がつたわってくるようだった
そしてむこうがわへ、ぼくはとびだした
また、そのさきのみちがつづいているようだった
ちょっとあらっぽいさわりかただったけど、たいせつだって言うあいじょうはかんじたよ
ちゃんとね
(ふふっ! くすぐったいよ!)
やわらかいものが、なんかいもなんかいもぼくのいたるところにふれる
(……ありがとう……)
みんなにも、心の中でつたえたよ
そしてまた、だいじにだいじに入れられてつぎのところへむかったんだ
しあわせと言う名の道の上を歩いて
ミネラル 莉子 @riko1018
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