第9話 朝の一幕

深山睦月みやまむつき視点】


「ん……」


 パチリと目が覚めた。


「かわいいいいい……」


 隣から悠月の声がしたので見ると、


「……くー……くー……」


 すやすやと寝ていた。


「寝言……」


 どうやら私は悠月よりも先に起きたらしい。


 時計を見ると時刻は6時20分。いつも私が起きる時間。習慣づけられているため平日は勝手にこの時間に目が覚める。


「まず顔洗お」


 洗面所に向かう。


 ―――



 私達の通っている大学の一限が始まるのが朝の9時。悠月の家は私より大学に近いのでいつも私よりも遅く起きているのかもしれない。


「どうしようかしら……」


 悠月をこのまま起こすのは勿体ない。


 なので少し遊ぶことにした。


 ……ふふふ……まずはほっぺたからだぁ!


「えい」


 悠月の頬を指でふにふにと触る。


「柔らかいわね……」


 しばらくほっぺで遊んでいると悠月が身じろぎして


「……んぅ……」


 と、喘いだ。


「エロイわね……」


 綺麗な肩と鎖骨がズレたパジャマの隙間から見え、思わず昨日のコトを思い出してしまった。朝なので自重した。


 ……悠月はどちらかというと中性的な見た目をしている。前に某同人誌即売会で女装コスプレさせた事があったのだが男とはばれなかった。つまり可愛いのだ。


「まつ毛綺麗……」


 悠月のまつ毛を優しく端から目元まで撫でる様になぞる。


「……んぁ……睦月?」


 ぱちりと悠月が目を覚ました。


「おはよう」


「おはよう~……そっか、今日から睦月と一緒に起きれるんだ」


「そうね」


「嬉しいなあ」


「ちょっ、悠月!?」


 突然ぎゅうっと抱きしめられた。そして頭をゆっくりと撫でられた。


「……顔洗って来るね」


 そう言って洗面所に行く悠月。


「……」


 抱きしめられたときは煩悩が爆発しかけたが、頭を撫でられ全てが吹き飛んだ。


 ……同棲というのは想像以上にすさまじいものなのかもしれないと思った。










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