第3話うあああ
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いい感じな事を言って差し出された手を握りながら内心煩悩塗れな私である。純粋であろう悠月に罪悪感。
でも、これからは存分に悠月にベタベタできると考えると思うと頬の角度が自然に上がってしまう。
「……睦月?」
「あ」
嬉しくて無意識に悠月の手をにぎにぎしてしまっていた。
「ごめん。……その、嬉しくて」
「っ」
何故か顔を抑えて悶える悠月。
「い、今のどこに悶える要素が」
「……む、睦月の上目遣い可愛い過ぎ」
悠月に可愛いって言われたと言う事が堪らなく嬉しい。
「あ、ありがとう……ふふ」
「うあああ」
「ちょっ、悠月」
ぎゅうっと抱きしめられる。
「ごめん。少しだけ」
「う、うん」
うーわー!心にきゅぅっと来る……
―――
少ししてからゆっくりと腕を離した悠月。
「……ありがとう」
「……どういたしまして」
「愛おしすぎて」
「うん」
「気持ちを表現したくて、つい」
「うん」
「じゃあ、朝ごはん食べる?」
「あれ食べたい。オムレツパン」
「分かった」
徐々にいつもの空気に戻っていくけど、ほんのりと体に残る悠月の体温が愛おしかった。
―――
「できたよ」
「ありがとうね」
トーストの中にオムレツが入っている。オムレツパン。悠月の作るオムレツが凄く美味しいのだが、そのふわとろのオムレツとサクサクした食感のトーストが絶妙に合って美味しいのだ。
『いただきます』
2人でかぶりつく。
中に入っているハムとチーズが半熟卵と絡む。いつも通り美味しい。
「美味しいわ」
「良かった」
「睦月、朝ごはん食べ終わった後本屋行かない?休みだし」
「いいわね」
その会話の後は無言で黙々と食べ進める。
―――
本屋に向かって歩く私達の前に仲睦まじい様子で手を繋いで歩くカップル。
「……悠月」
「なに?」
「……手っていつも繋ぎたいかしら?」
付き合って約1年経つが、今までは最高ラインが手を繋ぐだけだった。
そして私たちの目指すイチャイチャバカップルとは、日常的に手を繋ぐ事では無いのだろうか。きっとそうだ。
煩悩に対する言い訳を脳内でしていると答えが返ってきた。
「……そりゃあ、いつも繋ぎたいけど」
「っ」
少し恥ずかしそうに俯いて言う悠月を見て思わず口元を抑える。……可愛い。
「じ、じゃあこれからは日常的に手を繋がない?」
「そ、そうしようか」
前を見て歩き、なんとかお互いの手を握り合う。
「……やばいね」
「……やばいわね」
朝は寝起きで少しぼーっとしていたし、何より2人っきりだったので良かったのだが公衆の面前で手を繋ぐというのは思ったよりも恥ずかしい。
「慣れよ、慣れ」
「そうだね、慣れだね」
2人でぶつぶつ言いながら恥ずかしさを誤魔化す。
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