#9 お片付けの時間だぜ。
モーテルを出て、俺ァある男に電話した。
そう、パトリック。
「車がお釈迦なもんでね。迎えに来てくれっと
ありがてぇんだ。」
俺ァ、車で迎えに来てくれたパトリックに、
これまでの経緯を全部話した。
「何ですぐ警察に連絡をくれなかったんですか!?」
…ごもっとも。
「しかも被疑者の家族と一緒なんて?!」
……ごもっとも。
「まぁ、ちょうど良かった。あなたに話すことが
あったんですよ。…辛いだろうけど、ジェニファ
ー、君も聞いてくれるかい?」
ジェニファーはこくりと頷いた。
「ジョーダン・クランブルが経営していたバーが
爆発した事件、覚えてらっしゃいますか?」
『忘れもしねぇが、それがどしたい?」
「あの後、別件逮捕した被疑者が、爆発事件につ
いても認める供述をしたんです。」
今すぐにでもその野郎を殺してやりたいが、
俺ァその気持ちをぐっと堪え、パトリックの話
を、
聞いた。
「ところが、昨晩突然、その捜査が打ち切られる
事が通達されたんです。当然、被疑者も証拠不十
分で釈放。
えぇ、馬鹿げた話だと、私も思います。」
ここまで聞きゃ、察しのいいあんたなら
もう分かるな?
そう、ジョー・ブルトン様よ。奴のお力でもみ消
されたんだ。
ゲス野郎の常套手段さ。
ジェニファーはそれを聞いてわなわな肩を震わせ
てた。
「で、あんたどうするんだ?」
俺ァ、パトリックに聞いた。
「立場上、私にはどうすることもできません。
今日はあなたに、私の知ってる情報をお教えする
ためだけに、
お迎えに上がりました。加えて、ジェニファーは…」
大方、施設にでも送られんだろうよ、
ま、彼女のためにゃその方がいい。悲しみは悲し
みとして、胸にしまって、前をむいて生きてい
く。
寧ろ今のこの娘にゃ、
普通の幸せ、普通の生活ってのが、1番大事だと思う。
憎しみなんて、女の子にゃいちばん
似合わねぇアクセサリーさ。
だが、俺の思いとは裏腹に
「いや!父の仇をこの手で殺してからじゃなきゃ、この人とは離れない!」
パトリックの言葉を遮り、彼女は、そう叫んだ。
言うと思ったよ。
「甘えるな、ジェニファー。お前が親父さんを思
う気持ちは分かる。わかるが、これはもうお前の
手に負える事じゃねぇんだ。
俺に任せて、お前はこのパトリックと一緒に…
どっか行け。第一、迷惑なんだよ。」
俺に任せて…か。俺ンだって
このヤマぁどう片付けるか、ていうか片付けられんのかわかりゃしねぇんだ。
俺の言葉に傷ついたらしく、
ジェニファーは、その眼に、涙をためていた。
これでいい。これでいいんだよ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
パトリックにジェニファーを預け、俺ぁ、家に帰
った。とりあえず。
煙草に火をつけ、天井をじーーっと見つめた。
ガチャッ…
ドアノブが動く音がした。
ジェニファーだと思った。
「うせろっつうたろうが。」
そこに居たのは、ジェニファーじゃなかった。
「ジェラルド…?」
俺のバンド仲間の、ジェラルド・ケネディだった。
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