第15話 エピローグ
「わたげさんに話したいことがあるんだ」
そう言って、鏡屋先生に呼び出された。恐らく、会長就任の話だろう。
「安藤会長と山口副会長が、忙しすぎてボウリングに手がつけられなくなったそうだ。よって会長はわたげさんになってもらう」
「……わかりました」
「わたげさんは、わたげさんらしいやり方でやっていいからね?」
そう鏡屋先生が諭してくれたが、実際、リーダーになれる器ではない。
心配の種である。
「わたげちゃん、会長就任おめでとー!」
そう言って、星先輩は私の通う大学にやってきた。
「完全に先輩が仕込みましたよねこれ」
私が冷静に返す。
「だって会長純粋にタイプじゃないんだもん」
このトラブルメーカーめ……と私は思ったが、こらえた。すると、星先輩が口を開いた。
「会長会長っていうけどさ」
「はい」
「わたげちゃんってさ…ええと」
いつものキレッキレの星先輩が見られない。
「彼氏とか、いたりするの?」
「へ?」
私は突然の星先輩のプライベートな質問に、パニックになった。
「星先輩こそ絶対に彼女いるでしょう!?いなきゃおかしいですよ!」
私以上に社交的な人だから、いてもおかしくはない。
「いるんじゃねえ。いたんだよ。俺から告って2ヶ月で彼女側から振られてる」
振った彼女様の顔が見たいものですわ。そう私が言うと、
「俺と付き合う気はないの?」
そう彼は私に問いかけた。
「へ?」
「俺は、わたげちゃんに見合う男になりたい」
私はその言葉でポカーンと口を開けたまま放心状態になっていた。
「先輩はそれでいいんですか?」
「いいに決まってるだろ」
「私は、同性に嫌われてるんですよ?それでもいいんですか?」
私の問いに、彼は少し沈黙し、ポツポツと話し出した。
「もう二度と、寂しい思いはさせないよ」
そう星先輩はいい、私を抱きしめた。
暖かい温もりが心地よい。
「さて、安藤会長を取る?俺を取る?」
彼は笑いながら私に聞いた。安藤会長の今までの行為を思い出すと、答えはすぐ明確になる。
「告白、受け入れましょう」
今まで同性優先にしてきた思考を、覆した瞬間だった。
「今度は、2人で投げに来ような」
そう言って、彼は去っていった。
「やっと本音を出せたんだね」
そう電話口で話すのは、高校時代の親友、あず嬢とお夏だった。
「会長副会長がクソじゃなかったらとっくに同性を優先してたよ」
私はため息を付きながら2人に彼氏ができたことを報告をしたのだった。
「本当にわたげちゃんって同性の運がないよね」
そう言って、お夏は笑った。
「わたげちゃんが女になった瞬間だね」
あず嬢も喜んでいるみたいだ。
「でも、わたげちゃんすごいよね。本当にお兄ちゃんみたいな年上彼氏を作っちゃうんだもん」
お夏が私に伝えた。
「4月に伝えていた理想の男性像の話、まだ覚えていたんだ」
「だって、男の話、大好物だもん。わたげちゃん、男の話めったにしないし」
お夏がドヤ顔を私に見せた。
「この話、絶対月9ドラマにするんだよ?」
あず嬢もノリノリである。
「もういいわ、寝る」
私は顔を真っ赤にしながら電話を切った。案外、私も男好きなのかもしれない。
恋する気持ちは、私にはわからない。
だけど、私を好いてくれるのなら、それはとても嬉しいこと。
これから、私たちは、どうなっていくのだろう。未来の見えないワクワクさに、私は心をときめかせながら、眠りについた。
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