第13話 泥沼化は大学でも健在
11月中頃、真冬の寒さが近づく季節。私は安藤会長にこう宣言された。
「わたげんにお願いがあるのやけど」
「何ですか?」
「ボウリング同好会から出ていってくれへん?」
「……は?」
その一言で、私は呆気にとられた。唐突すぎる解雇宣言に、私は疑問を持たずにはいられない。
「会長、ずいぶんと急じゃないですか?」
「わたげん、星さんとデートしたんやろ?」
「2人でちょっと話しただけでデートではありません!」
「結局男女2人きりならデートやん」
安藤会長の横にいた山口副会長に突っ込まれてしまった。
「はぁ…もうデートってことでいいですよ。そんなことより、どこでそんな情報仕入れてきたんですか?」
「田中くんのパリスタグラム」
それって盗撮じゃん。と思ったけれど、私は田中くんとそこまで仲が良いわけじゃないので言おうにも言えない。
「まぁデートって言葉は訂正したいですけど、私と星先輩が2人きりで話していたことが気にくわないと」
「せやで。だってウチ、星さんのことが好きなんだもん。」
実際にそう見えなかったのは私だけじゃないはず。
「譲るのでボウリング同好会にいさせてください」
私がそうお願いすると、山口副会長が
「でもなー、星さんはわたげんのことが好きそうなんだよなー。こうなると修羅場やでー?昼ドラにしようやー」
と山口副会長はその場の泥沼化した雰囲気を楽しんでいるようだ。
「そういうわけなので、同好会に居続けるのは条件がある」
そう安藤会長は話す。
「なんの条件ですか?」
「決闘や!!」
彼女の言っている意味が分からない。どういうことなのだろう。
「来週の火曜日、午後5時にグランドボウルに来い。いいな?来ないと退会させるからな?」
同好会を退会させられるのは嫌だ。なので
「わかりました」
と受け入れの意思を述べた。
「わたげちゃん、決闘するって本当か!?」
決闘日の前日、星先輩は私に電話をかけてきた。
「もう会長が私に激おこプンプン丸でねぇ」
私は先輩に会長の好意を述べた。安藤会長と星先輩が付き合えばすべてが上手くいく。
「先輩、安藤会長と付き合おうとは思わないのですか?」
「一切思わない」
そっ、即答……。このままでは私が会長と副会長にリンチにされてしまう。
「なんで!?」
「俺の気持ちをないがしろにして付き合うのは、嫌だ」
うぅ……意思が堅い。
「安藤会長とは、なんで付き合えないんですか?」
「だって会長、色々ルーズじゃん」
これに関しては、星先輩の言っていることはもっともだと感じた。元々、ボウリング同好会に参加するためには、大会の2日前までに安藤会長に連絡を入れなければいけない。そこまではいいのだが、安藤会長は返信がとてつもなく遅いのだ!!1日後に返信とかザラにある。投げ放題の事件についてもしかりだが。
「わたげちゃん、頑張ってよ。わたげちゃんがいなくなったら、同好会はかなり寂しくなるからさ」
星先輩は、なぜこんなにも私を応援し、気にかけてくれるのだろうか。
「ありがとうございます、頑張ります」
そう言うなり、私はLINEの通話を切った。
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