第11話 中学時代の出来事
「わたげちゃん、今ってお暇?」
星先輩からのLINEだった。現在は土曜の午後2時の昼間である。
「暇ですが、何か?」
そう私は返信した。現在私は自分の部屋にいる状態である。
「話、聞かせてくれない?」
そんな私の話を聞いても得になんかならないのに。何を思ってこんな発言をするのだろうか。
「何が目的ですか?」
と私も返す。
「目的も何もないよ。ただ君の話が聞きたいだけ」
ただ力になりたいんだ、と星先輩は答えた。
「私の話は重いですよ?」
「望むところだ。H駅で待ってる」
そう返信をくれたので、私は急いでH駅に向かった。
星先輩は少しシャレた爽やかコーデをしていた。一方私は白Tにジーンズといった普通の格好を着ていくというズボラっぷり。そこで普段の行いが出るのである。
「少し長くなりますが、良いですか?」
「もちろん」
そう前置きをして、私は話を始めた。
「私、勉強が苦手なんです」
実は、中学を卒業してすぐに通信制高校に入学したことには理由がある。それは、入学してすぐに感じた「中学の壁」。先生ごとに変わる提出物のルール、授業の方針、すさまじい早さで単元が終わる。そんな中学のルールについていけなくなったのだ。
「西脇さん、ノートは使わないって言ったでしょう」
「でも、国語の授業ではノートを使うって…」
「うるさい。今は理科の授業なの。ノートはしまって」
そんなせめぎ合いが何度もあった。特に大変だったのは、大量の課題だった。教科ごとのルールに適応するだけでも大変なのに、家に帰って宿題なんて、とてもじゃないけど心身の疲労は半端じゃなかった。部活もやっていないのに。
「そこまでついていけてますか?星先輩」
「ああ、大丈夫だ」
それから中2の夏までは、親友に課題を写させてもらっていた。親友も私のことを大目に見てくれていたのだろう。しかし、中2の夏に悲劇が訪れる。
親友がH県に引っ越してしまったのだ。親の仲たがいが原因だと私は聞かされた。それから近所の友だちに写させてと頼んでも、
「それぐらい、できるでしょ?」
「自分で頑張って」
と言われる始末だった。そして私は課題が出せなくなり、テストの順位はビリ近くになり、成績も悪くなってしまったのだった。
3年生になり、ある程度授業の要領が分かってきて、半分程の科目はその型にそって受けることでやり過ごすことができた。しかし、授業の内容がわからないので、結果的に課題が出せないことには変わりなかった。成績表は1と2のオンパレードで、通える地元の高校は無に等しかった。それだけ、中学で「教科担当」が増えてそれぞれの担当に合わせるのは「酷な」作業だったのだ。
それに伴い、学年の同級生たちも親友が引っ越したことをいいことに、私をからかい始めたのであった。
「そんな簡単な問題もできないんだなんて」
「馬鹿だねぇ」
そう陰口も叩かれたりしていた。そんなわけで身も心もボロボロになり、通信制の高校に通い始めたというわけである。
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