第6話 会長副会長不在のボウリング

ボウリング大会が終わった夜8時頃。安藤会長と山口副会長が

「今日は星さんがいるので私たちはバスで帰ります」

と鏡屋先生の車の外で言ったのだ。おい、同性の後輩をほったらかす気かと思ったが鏡屋先生は

「気を使って2人ともえらいね。じゃあ2人はバスで帰ってね」

と鏡屋先生は返答した。そして、私を見るなり

「西脇さんも、この2人のように気を使えるようになれるといいね」

と言った。辺りに沈黙が走る。そして私が最終的に思ったこと。

「1人で夜道を帰るとか危険すぎますよ。2人ならまだしも1人なんて怖いです!」

と私がため息をつきながら反論した。

「確かにな」

と星先輩も頷く。しかし、H駅に着くまで鏡屋先生は怒れたのか、安藤会長と山口副会長の活動自慢をしながら車を運転していた。

大学祭実行委員をやっているんだよーとか。

「あの人たちメンタル強いですからねぇ」

私は担任から止められましたけど。と私は軽く会長と副会長をディスった。すると、鏡屋先生は

「私も西脇さんが実行委員やるなら止めるなぁ」

とキッパリ言った。すると、何を思ったのだろうか。

「待って」

と星先輩が口を開いた。

「学内のことならOBの俺がいるからなんでも聞いてくれよ。なんせ俺は実行委員やってたんだからな」

と。

「だから向いてるとか向いてないじゃなくて、やりたいのならやってみたら?」

そう星先輩は私に言ったのだ。

「あっ…ありがとうございます…」

「また何かあったら話聞いてやるよ」

なんで赤の他人にそこまでしてくれるのだろうか。星先輩の熱の入りように、鏡屋先生はドン引きしてるし。

そうこうしているうちに、H駅に到着し、私たちは解散した。



2週間後、今月2回目のボウリング大会があると連絡を受けた。すると、安藤会長と山口副会長は、ゼミが忙しいから今回は参加しないとの事だった。あの2人がいないとどう違うのか。私は実験してみたくて私は女1人でボウリング大会に乗り込んだのだ。

「女1人で怖くないの?」

そう言ったのは星先輩だった。

「先輩たちは信頼しているので平気です」

と私は言っておいた。クラブ大好き田中くんたちと4人で行く場合は躊躇したが、今回いるのは4年生3人がいるということで、安心して乗り込むことができたのだ。

「会長と副会長は?」

そう星先輩がたずねる。ゼミが忙しいんだそうですよ。と私は答えた。

「今日も星くんホットドッグ奢ってねー」

と鏡屋先生がニコニコしながら星先輩に頼んだ。もうやめてやれよと私は思い、見ていられなかった。







ボウリング場の受付に着くと、2階のボウリング場は満席だった。これは待たないとできないかなと感じたが、鏡屋先生が

「3階でやらせていただけませんか?」

と懇願した。すると、いいですよーという答えが返ってきたので、私たちは3階に上がった。

「3階は大会用のレーンなんだよ。」

「え!?」

私と星先輩は驚く。そんなところでやっていいんですか?と聞くと、

「私の力だよ。大会用のレーンはオイルがいいから、ストライク結構出せるかもね」

と鏡屋先生は返した。

オイルなんて関係あるんだ…と私は少し興味深い話を聞いたなぁと思った。そんなことを言うと父親に知ったかぶりするなと返されるのだろうと想像はできるが、まぁそれは置いといて。






そして、2階に戻り、受付で星先輩が財布を出す。

「先輩は働いているんですから、そんなことに使わないで、別のことにお金使って下さいよ」

と私は懇願する。すると、星先輩は

「いいんだよ。ここしか使うところないし」

と笑った。そこまで言うならとお言葉に甘えて、ホットドッグを奢ってもらうことになった。しかし、

「焼肉弁当がたべたかったなぁ」

と鏡屋先生はボウリング場のスタッフにクレームを言っていた。もう焼肉弁当は販売停止らしいのに。



この日は、中国人留学生、わん先輩と組むことになったが、無理して話す必要がなかったので、気楽に投げることができた。オイルの効果もあったのか、アベレージ得点115点と高得点である。1ゲーム130点が取れたのだから万々歳であろう。

結果的に、会長副会長と一緒に投げない方が落ち着いて投げられることが発覚した。

「よかったね、西脇さん」

そう鏡屋先生は喜んでくれた。

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