第4話 ボウリング場とパリピたち

そうこうしているうちに、O市のグランドボウル、通称グラボに到着した。中に入ると、ゲームセンターのガチャガチャした音が耳に響いていく。私の身体はうずいてきた。

2階に上がると、受付場と靴の貸し出し、20ほどのレーンが並んでいた。




私は靴を貸してもらうために貸し出し場に行くと、

「あら、入試であった子じゃない」

そう金髪に近い茶髪メガネの男の子が私に声をかける。

「名前は…なんだっけ」

と私が言うと、

田中龍星たなかりゅうせい。これから覚えてよね」

田中くんはニヤリと笑った。そして

「ボウリングが終わったら、クラブに行こうよ」

と誘われた。そんな田中くんのお誘いに、ガクンとうなだれた私。

クラブのことをよく知らないのでわかんないが、とりあえず下心ありそうな人が行く場がクラブだという私の中で勝手な偏見があるのだ。個人の見解だけど。

「ごめんだけど、クラブは無理。私、会長たちと投げに行ってくるから」

そう言って、私は自分の靴を貸し出し、その場から逃げ出した。




「西脇さん、上手いね!」

鏡屋先生は、私の腕前に驚いている様子である。父親にボウリングを教わっていたのは小学校の間の6年間。まあ根気よく教えてくれたものだ。当時の1回のスコアは80~90くらい。このボウリング同好会で、最高スコア116点を叩き出した。

「こんなに取れたの久しぶりです」

そう言ってボールを拭いていると、鏡屋先生に

「そんな6、7ポンドじゃ、ダメダメ。8や9ポンドにしなくちゃ。安藤会長と山口副会長もそうしてるんだし」

そうアドバイスいただいたので、8ポンドで投げると、玉が安定し、見事ストライクを出すことができた。




あっという間に5ゲームが終わり、周りを見渡すと安藤会長、山口副会長がいない。パッと喫煙所に目をやると、そこにはタバコをふかしいている安藤と山口の姿があった。

「何してるんですか先輩」

私が驚いていると、

「ん?暇つぶしやで」

そう安藤会長が笑った。タバコをふかしいている女という時点で、私とは生きている世界線が違うなと感じる。すると、

「よー安藤、山口。この子は誰だい?」

そう言ってタバコに火をつける男がいた。シュッとしているが、ハーフズボンにジャラジャラピアスを付けている、完全に見た目はパリピである。

「1年のわたげんやで」

そう言って山口副会長は、私を紹介した。

「よ、よろしくお願いします」

「ふーん。面白い子だね。俺は黒柳裕悟くろやなぎゆうご。よろしくね」

ちょっぴり危険な香りがする3人を見ながら、今後のことを考えていた。すると、鏡屋先生が1階に集合というので、私たちは1階に向かった。




ゲームセンターのある1階玄関口で、私たちはスコア表を手渡される。

「アベレージって、知ってる?」

そう言ったのは黒柳先輩だ。

「知らないです」

と私が言うと、

「アベレージっていうのは、スコアの平均って意味なんだよ。」

だからその差が少ないほど安定している。1ゲームのスコアそのものより、5ゲームの平均のスコアを見て、本来のスコアが読み取れるんだ。そう黒柳先輩が教えてくれた。どうやらその考えは鏡屋先生の受け売りらしいけど、父親との会話では絶対にない会話の内容である。ボウリングの腕前を上げるのにはいいかもしれないな。そう私は同好会の良さを見出していた。

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