第2話 彼氏がほしい2人

高校を卒業後私たちは、県をまたいでバラバラになった。お夏は京都へ伝統建築を学びに地元を離れ、あず嬢は生物学を学ぶために他県に渡ったのだ。そして私は姉妹校に内部進学し、地元にそのまま残って経営学を学ぶというわけだ。




今は大学に入って10日目の昼間である。

「大学ではー、彼氏がほしいよね」

あず嬢のLINE口での声は、心ときめく少女のようだった。お夏も同じく同調する。とりあえず私も同調した。

「わたげちゃんは、どんな人がタイプなの?」

お夏がこう私に問う。

「思いやりのあって甘やかしてくれるお兄ちゃん彼氏がいいな」

中学で卑猥ひわいな言動を放つ同級生を見てきた私。もう夜の営みばかり考えている変態はこりごりなのである。とはいっても、私に下ネタをふっかける男は眼中に無い男ばかりだったが。その後も私たちは様々な恋愛観を語った。理想の見た目、性格や服装など、女の子というのは男にロマンを持っているみたいだ。





「身長や服装は気にしないの?」

あず嬢が私に問いかける。

「あればポイントアップってぐらいかな」

そう私は返した。

「わたげちゃんって、男に関して淡白だし関心がないよね」

あず嬢の苦笑いがLINEで聞こえた。



「逆にわたげちゃんの大学での望みはなんなの?」

お夏が更に私に問いを投げかけた。

「私は大学で、女友達がほしい」

そう私は2人に告げた。2人は驚き、少しの間静かな空間が続く。

「そんなのすぐにできるよ?」

お夏はそう私に言った。それでできたら苦労はしていない。通信制で過ごした日々が特殊だからこそ女友達はできたのだと、私は大学に入学する前もした後も感じるようになる。

「高校みたいに、女の子と一緒に平和でいたいな。だから私はボウリング同好会に入るの」

私は高校時代の友人2人に、ボウリング同好会のことを話した。ボウリングを小学生の頃父親から教わっているのもあり、しかも同学部の2年のダブル女会長がいるので、仲良くなるにはうってつけの環境だと考えたからだ。




「彼氏はできたらラッキーぐらいに思ってる」

冷やかしが嫌だから同学部や同学年のカップルになるのはお断りだね。そう私は笑いながら本音を話した。

「まぁ確かに私も同じ学内で付き合うのは嫌だな」

そうお夏は私をフォローしてくれたけど、あず嬢は学内で付き合いたいと語っていたので、そこは人それぞれなのだろう。



4月の雲ひとつない快晴。

私たちのグループ通話を終わらせたあと、私はボウリング同好会の入会届けを提出しに担当顧問のミラー先生の研究室に向かった。

私はもう男女間のトラブルは起こさない。

そう私は意気込んだ。

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