幕話 sideルドルフ男爵

━━sideルドルフ男爵

私は本当の貴族というものを知った。


私が知っていたのは自信の欲に振り回され、周りに被害が及ぶほどのワガママを振り撒く欲の怪物のような存在だった。


私がそんな風に思っていた貴族になったのは、隣国であるソシラン連邦との戦争で多大な戦果を残した褒美に男爵位を授かった。


そして、それを良く思わない貴族達が私に褒美として渡される領地に根回しを行い、自身が寂れさせた土地を私が受けとるようにしたのだ。


それからは、敵対した貴族から攻撃を受け、それの対処で手一杯になってしまってまともに領地経営できなかった。


そうでなくても、私は戦争の才はあっても政治の才はないのだ。


そんな貴族に優秀な仕官が仕えたがる訳もなく、領の維持だけが精一杯だった。


そんな時、「アーチボルド領の領が著しく発展している」という噂を聞いて耳を疑った。


貴族は平民から搾取するかとしか考えておらず、まともに領地経営をするとは思わなかったからだ。


その時の私はどうせ行政府の役人たちが当主をごまかしながらなんとか改善させたのだろうと思っていた。


それが間違いだと知ったのはアーチボルド家当主が盗賊退治と領内の経済を改善・成長させたといのが理由で皇帝陛下より勲章を賜るというのが告知されたときだった。


しかも、皇帝陛下が直々に勲章を授与されるのは貴族としては1200年ぶりの快挙だった。


この勲章のシステムは陛下直属の諜報機関が本当にその貴族の実績かどうかを調べ上げ、本当にその貴族の実績だったときだけ授与される。


実際に実績を詐称して勲章を賜ろうとした貴族が500年前に居たそうだが、罰として貴族位が降格されたという事例がある。


なかなか現れなかった勲章授与は国中を驚かせた。


なにせ、授与されるのが難しすぎて諦めているのがほとんどだからだ。


そんな中執り行われた式典で帝国の歴史を閉じるあの大事件が起きた。


式典中に裏切った貴族が手引きしたソシラン連邦の魔導艦が攻めてきて短時間で帝都が陥落した。


多くの死傷者を出したこの事件。


アーチボルド家当主も死んだと思われていたのだが、1週間もしたら表部位に戻ってきた。


アーチボルド家の経済社・軍事力は帝国内でもトップだ。


他の貴族が怠けている合間に約50年の月日をかけて発展させてきた結果だ。


私のような弱小の領主からしたら、清廉潔白で帝国内でも随一の強さを誇るアーチボルド家は希望だ。


そんな私はアーチボルド家の分家が離反したという知らせを受けてアーチボルド家当主に会ってみることにした。


当主であるアラン殿に会うために領都に入るとその規模の大きさに圧倒された。


帝都と比べても遜色ないほどに発展していたのだ。


道路はきちんと整備され、魔道車が走っている。


空を見上げると様々な看板があり、超高層ビルが立ち並んでいる。


そして、そのビルの間を魔道大学の生徒だろうか、魔導師が鞄をもって飛んでいる。


魔道列車も走っておりここは同じ貴族が治めているところなのかと信じることができないほど発展していた。


アラン殿が住んでる屋敷に到着すると落ち着いた感じの屋敷だった。


ただ、帝国でも有数の経済を誇っているアーチボルド家なだけあって他の貴族のやしきの6倍ほどの規模だ。


門の前で呆然としていると中から使用人と思われる人が出て来てなかに案内された。


使用人ま教育が施され、動作が洗練されている。


屋敷内の掃除が行き届いており汚れひとうない。


そうしていると応接室に通されアラン殿と面会することがきた。


アポなしの訪問で追い返される飛んでいると思っていたがどういうわけかすぐにアラン殿に会うことができた。


式典でまだ幼年学校に通っていないことは知っていたが実際に会ってみるととても入学前の子供とは思えない理知的な瞳をしていた。


この領を短期間で発展させた領主というだけあって一つ一つの話題で私を見極めようとするのがわかった。


当たり障りのない会話を少ししたあと、アラン殿はすぐにこちらとの取引を求めてきた。


条件は破格といってもいいものでアーチボルド家に利益があるか心配になるほどだった。




理由を聞くとアーチボルド領軍は装備、人材の質と量も超一流なのだか深刻な優秀な指揮官不足となっているからだそうだ。


もちろん私のほかにも優秀な指揮官が在籍していることは事実だか、アーチボルド領軍は盗賊退治ぐらいしかまともな実戦経験がないため、戦争なったとき不安が残るそうだ。


そこで、戦争で結果を残し貴族位を賜った私はこの問題を解決できる人材だと判断したためだそう。


そうして私はアーチボルド家に仕えることになった。


それからの日々は一変した。


満足に学校にも通わせられなかった娘には領都にある学校に通わせて上げれるようになった。


私や家族が住むための家も領都に用意してくださり、娘の学費の面倒も見てくださっている。


領にも経済的支援を行い、寂れた土地が少しずつだが豊かになってきている。


私たちにここまで支援をしているのに経済政策や軍事に多額の投資をしているといのに驚きだ。


それから月日がたち私は軍の最高責任者になりアーチボルド領軍を指揮する立場にある。


この立場になって軍への投資額の大きさを実感した。


帝国軍に所属していたときはこんなに支援してもらうことができなかった。


例として、

一人一丁の魔道銃が持てるとか言っておいて実際は二人に一丁のぐらいしか配備されていなかった。


領軍は兵士一人につき理想的な装備を配備している。


私が来てから軍の強化にも力を入れ始めたようで更に領軍は強くなった。


ここまで成長しても油断なく未来を見据えているアラン殿すごい人だ。

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